「私、できるじゃん!」下手でいい、笑われてもいい

── 最近はウクレレも始められたとか。
香坂さん:独学でやっています。最初はYouTubeで練習していたんですが、動画は勝手に進んでいってしまうので結局、本を買って自分のペースで向き合っています。全然うまくならないんですけど、コードを4つ覚えたら歌が歌えるようになって。「弾き語りが夢だったんだよな」と自分の夢も思い返せました。
息子が昔、家でベースを練習していたとき、毎日同じ曲を弾いていたので、私が「またそれ弾いてるの?」と言ったらしいんですよ。今は私が毎日のように同じ箇所を弾いているので、そのフレーズを息子からブーメランで返されています(笑)。
── 「この歳からやって意味があるのかな」と感じてしまう人も多いと思います。
香坂さん:頑張ることって、別につらいことじゃないんですよ。コードが1個も弾けなかったのに4つ弾けるようになったら「弾き語りで歌えるじゃん!」と思える。周りに笑われたとしても、自分で「私、できるじゃん!」と思えればいい。人に認めてもらうことを目的にしなくていいと思っています。自分が楽しいからやっている、そのなかで「いいね」と言ってもらえたら「そうなのよ」と思えればいい、それくらいの感覚がちょうどいいのかなと。
── 還暦を過ぎて「もう成長できない」と感じてしまうことはないですか?
香坂さん:大きく変わることはないかもしれませんが、「維持すること」はできると思っています。60歳になる少し前から筋トレも始めたんですが、それも今から劇的にスタイルが良くなることを期待しているわけではありません。
以前は膝が悪くて、信号が変わったときに子どもたちに「ママ、行くよ!」と先に走られても追いかけられませんでした。でも今は、パッと走れるようになったんです。小さな変化ではありますが、私にとっては大きな違いです。めざましい成長はなくても、ゆっくり続けていけば今の状態を保つことはできる。「歩ける体をキープできればいいな」くらいの気持ちで、楽しくやっています。
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「下手でもいいし、40分で飽きてもいい」。香坂みゆきさんが学び直しの中で見つけたのは、そんな自分にOKを出す感覚でした。
新しいことを始めるとき、私たちはつい「ちゃんとできるか」「意味があるか」と考えてしまいます。でも本当は、「やってみたい」と思った気持ちそのものに、すでに価値があるのかもしれません。うまくできなくても、続かなくてもいい。ただ、「ちょっとできた」と思える瞬間が積み重なることで、自分の中の景色は少しずつ変わっていきます。
あなたは今、「できるかどうか」を理由に、後回しにしていることはありませんか?それとも、「やってみたい」と思ったその気持ちを、もう少し大切にしてみますか?
取材・文:石野志帆 写真:香坂みゆき