生後すぐの心臓手術、名もなき生活で培ったもの
── 靖広さんから見て、娘の優奈さんはどんなお子さんでしたか?
靖広さん:我が家は共働きで、3人の子どもたちは中学生の頃から「家事は当番でやる」のがルール。男女関係なく、自分のことは自分でやるのが当たり前でした。
── その自立心は競技中の彼女の行動にも現れていると思いますか?
靖広さん:本人に聞かないとわかりません。ただ、彼女は今のチーム(フォルティウス)で、さらに成長したいと考えているようです。自立心が育まれ、自分の価値判断に基づいて行動できるからなのでしょうか、試合中も年上のチームメイトに物おじせずに意見を交わしているようです。五輪出場がかかった世界最終予選の際も、大声で「ゴー(掃け)」「ウォー(履くのをやめる)」と、指示を飛ばしていました。
── 優奈さんはもともと先天性心疾患の難病(純型肺動脈閉鎖症)で、5歳のときに手術をしました。アスリートとして活動を続けることに不安はありませんでしたか?
靖広さん:生後すぐに心臓から肺への血液を送る弁が閉じて機能しない状態で、約3か月間入院して、一定の体力を備えた5歳時に手術して以来、問題はないようです。寛解の状態ではありませんので、現在も経過観察として1年に1度は検診へ。女性ですから、出産のときに心臓に負担かかからないかといった、可能性も考慮してのことのようです。

── 優奈さんが大人になってからアドバイスをするような機会はあるんでしょうか?
靖広さん:特にないですね。いまはもう技術的にも情報量の面でも、娘のほうがはるかに上ですから。たまに実家に帰ってくると、過去の試合映像を一緒に見ることもありますが、かける言葉は「体に気をつけて、ふだんの力を発揮して」くらいです。ふだんからアドバイスなどのやりとりはしていなくて、五輪最終予選の後にようやく、会場で「おめでとう」と言ったくらい。彼女自身は、自分たちのやってきたことを出しきれば、おのずと結果が出ると強い自信をもって臨んでいたようです。