大阪の街で当たり前になった赤色の電動シェアサイクル「HUBchari(ハブチャリ)」。実はこれ、路上生活者の脱出を支える巨大な仕組みだとご存じでしたか?19歳でホームレス支援のために認定NPO法人Homedoor(ホームドア)を立ち上げた川口加奈さんは、20歳で「ノキサキ貢献」を掲げ同事業の営業に300社を回るも、実績ゼロで全滅。心が折れかけた彼女を救ったのは、ホームレスの「おっちゃん」たちが持つ意外な特技でした。8年の下積み期間を経て、大阪のインフラへと進化した「三方よし」の奇跡の裏側に迫ります。

ホームレスのおっちゃんが得意なことで事業を

── ホームドアでは、ホームレスの人が路上から脱出するための支援策として、住まいや仕事など多種多様な選択肢を提供しています。シェアサイクルのHUBchariに関わる業務もその仕事のひとつ。なぜ自転車だったのでしょうか。

 

川口さん:ホームレスの人の「得意」を活かした仕事の提供を考えていました。「得意なことって何だろう?」と、おっちゃん(川口さんが口にするホームレスの人の愛称)たちに聞き取り調査していたら、「自転車修理くらいやったら、わしにもできるで」といった声が多数寄せられて。自転車で廃品回収したことがある方が過半数以上いて、みなさん自転車修理に慣れていたようなんです。

 

ただ、単純に自転車を修理・販売してもホームレス問題の解決にはならない。購入者の多くは支援が目的となり、おっちゃんたちは「ホームレス状態だから支援されている」という意識で働くことになるからです。そこで自転車に関連するビジネスに的を絞り、あれこれリサーチするなかで目にとまったのが、当時、欧米で大流行していたシェアサイクルでした。

 

シェアサイクルは街中に貸出・返却拠点となる場所(ポート)を設置し、そのポート間であれば自転車をどこで借りても返せるシステムです。この仕組みは違法駐輪などを解消するためのもので、シェアサイクルの利用で放置自転車を生み出さないことが期待できます。その利点が、駐輪場不足から放置自転車が多い大阪の状況と結びつきました。シェアサイクルを実施すればホームレス問題だけでなく、放置自転車問題も解決できる。そして、おっちゃんたちが運営に携わることで支援する側になれるんです。

 

自転車の移動・再配置などHUBchariで仕事を得る「おっちゃん」たち

── 実際、どのような仕事があるのですか。

 

川口さん:自転車の貸し出しやメンテナンス、受付業務、トラックによる拠点間の台数調整のための運搬、バッテリー交換や修理など、多様な業務を担ってもらえるのも魅力です。シェアサイクル事業を通じて、おっちゃんたち自身が放置自転車問題を解決する担い手になれば、より働きがいを感じられるのではないかと考えていました。