91歳、娘とのふたり暮らしで描くこれからの「夢」
── 9年前に奥様が亡くなられてからは、未知子さんとふたり暮らしをしているそうですね。
高嶋さん:朝ごはんは未知子の担当です。生野菜に、ゆで卵かスクランブルエッグ、ソーセージ、トースト、コーヒーも豆から淹れてくれます。毎朝必ず7時半には「お父さん、できたよ」と起こしてくれます。洗濯も彼女の担当。実に規則正しい生活をしていますよ。
夜ご飯は僕が作ります。まだ俳優として駆け出しだった兄貴(俳優の故・高島忠夫)と一緒に住んでいた頃に覚えた料理ですが、食べてくれる人がいるから作り甲斐がある。ハンバーグは玉ねぎをみじん切りして炒めて、食パンの耳をちょっと牛乳で浸したのを挽き肉に入れて。カレーはバターとメリケン粉(小麦粉)を半分ずつ入れて、茶色くなるまでじっくり炒めると美味しいんですよ。
ほとんど当時の友達は亡くなっちゃったから寂しいんだけど、未知子がいるから91歳の今も頑張れています。
── これからの「夢」や、願っていることはありますか。
高嶋さん:いちばんの望みは、未知子の今後の生活が決まること。良いグループホームが見つかって、そこでの生活が当たり前になるのが、僕の望みですね。少し前は「そんなところ行きたくない」って言ってたんだけど、最近はちょっと興味があるみたいで、少し安心しているんですよ。
未知子の不幸は、ちょっと知恵がありすぎるところだと思うんです。人とケンカすることも多いから、グループホームのスタッフさんや、入所者さんとうまくいかなくなるのを恐れていて。知人で、未知子のひとつ上の年のダウン症のお子さんがいる方が、グループホームに入っていると聞いて。週に1回、家に帰り、家にいるときはお酒好きのお父さんと1杯やって、グループホームから働きに行っていると聞きました。もう、私にとってはこれが理想です。未知子もそうできたらと思っていますね。
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「ダウン症の子が持つ豊かな感情は、誇れる個性」。 弘之さんの言葉は、障がいの有無にかかわらず、私たちが「普通」という枠組みで誰かをジャッジしていないか、静かに問いかけてきます。
いじめっ子への仕返しで姉を守った、ちさ子さんたちの規格外の愛。それは、誰かが困っていたら家族総出で立ち向かうという、シンプルで力強い絆の形でした。あなたは、大切な人が心ない言葉に傷ついているとき、迷わずその隣に立つことができますか?
取材・文:内橋明日香 写真:高嶋弘之 注:高嶋さんの高ははしごだかが正式表記