「パパだ!」ネタを真似る娘に、思わず抱いた拒否感

── 娘さんは、ハジメさんの芸人としての姿をご存知ですか。

 

ハジメさん:正月にテレビで昔の『爆笑レッドカーペット』の映像が流れたときに、娘が「パパだ!」って。そっから「イエス、フォーリンラブ」を覚えちゃったんです。奥さんは「そうそう!合ってる!」って喜んでいましたが、僕は「やめてくれ、頼むから変なこと覚えさせないでくれ」という気持ちでした。

 

ハジメさんご家族
「優しいパパの顔」娘の保育園の行事に夫婦で参加するハジメさん

── うれしい!とはならなかったんですね。

 

ハジメさん:20代で売れっ子のときなら嬉しかったでしょうね。でも、今の僕は「ついに知ってしまったか…」という感じです。

 

芸人の姿を子どもに見せたいと思わないんですよね。うちの父は仕事人間で、あまり一緒にいた記憶がないんです。それなのに自分の仕事は僕に見せたがって「俺が忙しい理由はこういう仕事だから」って。その反面教師なのかわからないんですが、僕は「パパが何の仕事をしていてもいいけど、ずっと一緒にいてくれる人だ」と思われたい。いちばんの味方だとわかってくれたら、それでいいんです。

「あのころに戻りたいとは思わない」有名になることより守りたい時間

── 今、ハジメさんの中で「家族」の優先順位が圧倒的に高いのですね。

 

ハジメさん:若いころ、ありがたいことにテレビにたくさん出させてもらいました。でも、売れ続けるには犠牲にしなきゃいけないものがある。プライベートがなくなる生活と「売れること」が今の自分に見合うのか。有名になりたくて芸人を目指しましたが、生活が犠牲になる過酷さも知りました。外に行っても、個室でもない限り人と話もできない。あの時代でそうだから、SNSがこんだけ普及している今の人たちの息苦しさはもっとですよね。芸人としてネタはし続けたいですが、芸能界でバンバン活躍することへのモチベーションは正直、減っています。

 

── 若いころとは価値観が変わり、40代で家族のために新たな道を歩んでいます。同じようにセカンドキャリアを考える人に、伝えたいことはありますか。

 

ハジメさん:偉そうなことは言えませんが、自分の経験で言えることはやっぱり「何を大切にしたいか」をまず考えるべきだと思います。僕の場合は家族がいちばん。自分の好きなことが仕事になったとしても、家族を置いてまで突き詰めたいとは今は思えません。まずは自分の向き不向きを知り、自分が置かれている状況を冷静に見極めることが、新しい一歩には必要だと思います。

 

 

猛暑の現場で命の危険を感じながらも、娘の保育園のお迎えに行ける日々に「今の正解」を見出したハジメさん。

 

自分の仕事を子どもに知ってほしいと願った父とは対照的に、パパが何の仕事をしていても「ずっと一緒にいてくれる味方」だと思われたい。そんな彼の言葉に、共感する部分はありますか?かつての栄光を娘に真似され「やめてくれ」と願った、不器用で真っ直ぐな親としての葛藤について、みなさんはどう感じましたか。

 

取材・文:内橋明日香 写真:ハジメ