特別養子縁組が増えない理由は
── 迷ったり、悩んだりする人が数多くいるのですね。特別養子縁組をめぐる課題は?
志村さん:制度を利用する人が少ないことです。年間600〜650件の特別養子縁組が行われていますが、児童養護施設には2万3000人〜3万人の子どもたちがいます。2019年の民法改正で特別養子縁組の年齢上限が、原則6歳未満から原則15歳未満に引き上げられ、国も年間1000件以上の成立を目指していますが、件数は増加していません。
「制度があまり知られていない」「子どもの受け皿となる児童養護施設があるため家庭養育が進みづらい」など、さまざまな要因やとらえ方があります。もちろん、子ども自身が児童養護施設にいることを選んだり、生みの親が児童養護施設に預けた子どもを手放さなかったりする(養子縁組をしない)ケースもあります。養子縁組を利用せずに、里親に預ける方法もあるのですが、その里親に子どもが懐くとイヤなので、「施設でめんどうを見てください」と話す、生みの親もいるんです。
基本的に養子の当事者は圧倒的に人数が少ないので、世の中から関心を持ってもらいにくい状況です。また、九州は制度の利用が多いけれど、他の地域ではまだまだ、というように地域格差もかなり大きいです。

── 志村さんは特別養子縁組制度の当事者として、制度利用が増えることを望んでいますか?
志村さん:はい。自分の経験からしか語れませんが、子どもにとっては家庭養育がベストだと信じています。両親や実家として「愛情を受け、自分の居場所だと心底思える帰る家」がある環境が、養子当事者の自己肯定感を養うにあたって重要だと考えているからです。帰る家があることで、自分は必要とされている人間なのだと、真に感じることができます。大切なのは、親の事情ではなく、子どもの幸せや愛情をどのように考えるかです。
「生みの親による子育ては明らかに難しい」と周囲が考えているのに、「いずれ状況がよくなれば迎えにくるから」と、親権を手放さずに児童養護施設に預け続ける生みの親がいるいっぽう、早い段階で特別養子縁組制度を選ぶ生みの親がいます。これは、無責任に子どもを捨てるのではなく、勇気と強い意思を持って、わが子を育ての親に託すことではないでしょうか。
制度そのものに加えて、子どもの人権、社会的困難を伴う妊娠・出産への支援、生みの親・育ての親へのケアなど、さまざまな面で、生まれた命をどのようにつないでいくかは、社会で考えるべき課題だと思います。