キャラ変で超能力者イメージを払拭

── エンタメとしての演出が「本物」と信じられ、欲や妄信が混ざった依頼が次々持ち込まれる。そんな状況が続くと、精神的にしんどくなりませんか。

 

Mr.マリックさん:そこまではいきませんでしたが、やはり悩みましたね。さまざまな期待を持って来られる方々への対応に困り果てて、早く「超能力者ではなくマジシャンだ」と、はっきり伝えなければと思うようになりました。ただ、いきなり「じつはマジシャンです」と言っても、強く思い込んでいる方々には届かない。一度固まったイメージを解きほぐすのは、想像以上に難しかったんです。

 

── そこから、どうやってイメージを覆していったんでしょう。

 

Mr.マリックさん:日本テレビの五味一男プロデューサーが「別のキャラクターになってしまえばいい」と、提案してくださったんです。そこで生まれたのは、私自身のパロディ版「栗間太澄(くりまたすみ ※ミスターマリックの逆読み)」というキャラクター設定でした。オールバックで洋服を着た独特なおじさんに扮したコミカルなキャラへと変えることで、いわば「洗脳はずし」をしたわけです。

 

キャラクターを変えて見せ方を振りきったことで、徐々に「これはエンターテインメントなんだ」という空気が広まっていきました。

 

Mr.マリック
トレードマークのメッシュのヘアスタイル

── ミステリアスな存在から一転、コミカルなキャラへ。ものすごい振り幅でしたが、これまで築いてきたミステリアスな「マリック像」が崩れる不安はありませんでしたか。

 

Mr.マリックさん:ミステリアスな像が崩れる不安よりも、生き残ることに必死でした。じつは、少し前に顔面神経麻痺になって一時的に休養を余儀なくされ、テレビから離れていた時期があったのですが、「テレビに出続けないと居場所がなくなる」という焦りがありました。その後、営業に行っても「最近、テレビ出てませんよね」と言われてしまう状況でしたから。

 

そんな時期に、テリー伊藤さんからも声をかけていただき、バラエティ番組にも挑戦しました。「チアガールの格好をしてくれ」と言われたときは、さすがにためらいましたが、やりましたよ(笑)。新しいチャンスをつかみたかったんです。当時は料理人の周富徳さんらが中華鍋で雪山を滑るなど、視聴者を楽しませる企画がウケていた。それを見て「マジシャンだからといってカッコつけている場合じゃない。テレビで生き残るには笑いの要素が絶対に必要だ」と、感じたんです。