自己肯定感が高くなくても「別にいい」と思えた
── 休養前のご自身の状態について、前田さんは自己肯定感が低かったとお話しされていましたが、現在はいかがですか?
前田さん:やっぱり基本的に自己肯定感は高くはないし、自分に自信はありません。でも、自信がなくても、自己肯定感が高くなくても別にいいやって思えるようになってきています。僕の場合、高くある必要はないと思えた、いうか。
今はそれより、「自分にとって心地いい時間を意識して確保したい」と思うようになりました。たとえば、文章を書くこと。最近、エッセイやコラムも書くのが好きなんだって実感できるようになったんです。仕事じゃなく、どこかに公開する予定もないんですが、日常で思ったこととかを書いていて。書いてる間は、誰のためでもない、純粋に自分のために書いている感覚になれていると思います。
もちろん世の中に発信できたら僕自身うれしいし、幸せを感じるとは思います。でも、僕の中で書く行為自体が十分意味を持っているし、書きあげたときには、「よし、書いたぞ」って純粋に思えるんです。
あと、うちの祖母は冷え性なんですけど、朝起きて「寒いなあ、あったまりたいなあ」といって白湯を飲むと体の中からあったまって「幸せ」って思えるって言っていて。僕も、祖母みたいに幸せを感じられる瞬間、自分の中の人間らしさを探している途中です。
── いいお話ですね。白湯を飲んであったまっているおばあさんの姿が想像できます。
前田さん:もうひとつ、フィンランドの旅では、ストレスがたまったと感じたときの気分転換がいかに重要か、あらためて気づかされました。休養前には推し活とか新しい趣味を探してみたりもしましたけど、欲しているのはそういうことじゃなかった。言い古されているけれど、寝る、食べる、運動。これが基本だなって。だから、体調があんまりよくないな、と思ったら、毎日7時間以上の睡眠、良質なたんぱく質の摂取、朝日を浴びて適度な運動を心がけています。結局、人間って動物なんだなって思いますね。
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「ひとりで生きている」と肩を怒らせて、自分をすり減らしていませんか? 銀シャリ・橋本さんのように、あなたの体温を思い出させてくれる人は、意外と近くにいるのかもしれません。他人の物差しで自分を計るのを一度やめて。今夜は、前田さんのようにおばあちゃんの「白湯」のような、ささやかな幸せに身を委ねてみませんか。
取材・文:高梨真紀 写真:前田裕太