「大きなストレスって、血が出ていない流血みたいな状態だと思うんです」。そう静かに語るのは、お笑いコンビ・ティモンディの前田裕太さんです。甲子園を目指した球児時代を経て、相方の高岸宏行さんと共にブレイク。順風満帆に見えた活躍の裏で、前田さんの身体は悲鳴を上げていました。2年前に発症した円形脱毛症は、知らぬ間に自分を抑圧し、後回しにし続けてきた「限界」のサインだったといいます。高級寿司や趣味のゴルフなど、理想的な「幸せの追求」をしていたはずの彼が、なぜ一時休養という決断に至ったのか。復帰から約4か月。前田さんが今、初めて語る「本当の自愛」とは。
ヘトヘトになっても泳ぎ続けようとしていた
── 昨年は、一時期休養されていました。現在はいかがですか?
前田さん:だいぶ調子いいです。ストレスがゼロの人っていないと思うのですが、ストレスは目に見えないし、わかりづらい。僕の場合、2年ほど前に円形脱毛症になるまでわからなかったように思います。大きなストレスは、言ってしまえば、“血が出ていない流血”みたいな状態。円形脱毛症に気づけたときは、「ストレスって身体に出るんだ」っていう驚きのほうが大きかったですね。
今振り返ると、芸人の仕事でここからというときに円形脱毛症になって、それが「休みなさい」のサインだったかもしれないのですが、一度立ち止まる、という選択肢が自分のなかにはありませんでした。いまの人って、社会で「こうあるべき」というルールと、人がたくさん集まってうまくやっていくためには守らなければいけない枠組みみたいなものを重視せざるを得ない状態が多いのかなと思っていて。僕も同じように、社会の枠組みに自分を押しこめすぎて、自分自身の身体が欲しているものを抑圧したり、後回しにしていたのかなって思いました。
芸人としてお金を稼ぐことを自分の価値だと思いこもうとしていたというか、目標や夢を実現するためにいろいろ頑張っていたと思うんです。でも、知らない間に、自分が思うよりも大きなストレスが蓄積していたのかもしれません。

とにかく休養前の自分は、息継ぎなしで泳いでヘトヘトになっているのに、なんとか息継ぎの回数を増やしながら、まだ泳ごうとしている状態だったのかなと思います。
── 前回、2024年の取材では、「目標は幸せになること」ともおっしゃっていました。幸せになるために不幸せの要素を減らしていく、とお話しされていたのが印象に残っていますが、まさに不幸せの要素を減らそうと試されていた最中だったのでしょうか。
前田さん:そうですね。休養前の僕は、自分の幸せを追求していました。きっと何も無駄なことはなかったと思っています。ただ、もしかしたら方向性が少し違っていたこともあったような気がします。高級寿司を食べに行ったり、推し活をしてみたり。いろいろやってましたけど、あのときの自分が本当に求めていた幸せって、もっと豊かな気持ちでのんびりと過ごす、穏やかな状態に近かったのかなと、今では思います。