「3年で年商1億」は、正直わかっていなかった

── コーヒー事業をやるとしても、たとえば竹内さんの知名度があれば、焙煎と宣伝だけに徹することでも成り立ったのではと思うのですが。豆の仕入れから焙煎、受注業務から梱包、発送、そして経営計画まですべてをご自身でやろうとしているのはなぜですか?
竹内さん:これまでメディアで働くなかで、「物事を表面的に整えているだけでは、受け手にはすぐ伝わってしまう」と実感してきました。だからこそ、人前に立つ以上は、自分の言葉でしっかり語れる人でいたいと思っています。そのためには、焙煎だけでなく、事業全体を自分の手でつくる必要があると感じました。これまでの肩書きを活かすよりも、イチから向き合いたいと思ったんです。
── 昨年8月に事業立ち上げを表明されたとき、「3年で年商1億円」という目標を掲げられていました。この数字にはどんな理由があったのでしょうか?
竹内さん:あの数字を考えたときは、正直なところ、ビジネスについてよくわかっていませんでした。言葉と向き合いながら番組を進行する仕事をしてきたので、経営の世界とは無縁でしたから…。ただ、自分なりに計算して「ここまではいけるだろう」というラインより少し上として掲げたのが「1億円」という数字でした。でも実際に事業を始めてみると、「1億円を目指すのは全然違うな」と思い始めたんです。
── それは、1億円は言いすぎたという意味でしょうか?
竹内さん:いえ、「もっと上を目指さないといけない」というふうに思っています。他のコーヒー業界の方々の話を聞いても、私が目指しているようなコーヒー屋さんは、最低限そのくらいの収益が出ています。番組で堀江貴文さんにもお話を伺ったんですが、「会社としては1億がスタートラインだ」と言われました。
── 一般の方々からは「3年で年商1億円」という目標にどんな反響はありましたか?
竹内さん:SNSのコメントなどでは「絵空事だ」じゃないですけど、「コーヒー屋で1億円は無理だよ」みたいな感じのコメントは多かったです。知り合いの方からも、コーヒー業界でちょっとした波風は立ったような話は伺いました。「何を大きなこと言ってるんだ?」っていう。
──「言って後悔した」という気持ちはなかったですか?
竹内さん:後悔はないです。これまでメディアの前で発言してきたなかで、後悔するような発言もたくさん経験もたくさんしてきましたので、もしかしたら感覚が少しマヒしているのかもしれません(笑)。
ただ、そもそもコーヒーで起業しようと決めた背景には、「自分が経験した忘れがたい感動を、多くの人に伝えたい」という思いがありました。それを趣味の延長ではなく、きちんと事業としてやるんだ、という覚悟をどう表せばいいのか考えたときに、行き着いたのが「3年で年商1億円」という数字だったんです。
── 少し否定的な反響に、「なにくそ!」と闘志を燃やすタイプなのでしょうか?
竹内さん:「え、そうなの?」とは思いましたが、そもそも「なにくそ!」と思うほどの知識がありません(笑)。ですが、コーヒー事業にもいろんな形態があります。限られた1店舗の喫茶店でコーヒーを提供していくのであれば、たしかに結構、難しい数字なのかなとは思いますが、ビジネスとしてコーヒーを手広く展開していくのであれば、そんなに非現実的ではないと考えています。
ただ実際に計算してみると、昨年400万円かけて導入した5kgの焙煎機だけではどんなに頑張っても無理ですね(苦笑)。アナウンサーの仕事もある今のスケジュールでは現実的にはできません。それを実現するのであれば焙煎機を大きくするしかないと思っています。すごく根本的なところなのですが…。
── このビジネスに関する本気度と現実との狭間で悩むことはないですか?
竹内さん:仕事柄、ビジネス界の大物のような方々にアクセスできる立場にいるので、みなさんとのギャップを感じてしまう日々です。でも、今いる自分のレベルはそこではないことは明確なので、一歩一歩進んでいくしかないと思っています。進んでいく過程もすごく楽しいんですよ。今まで見えてなかった世界が見えてきたので、挑戦してよかったです。
アナウンサー職や芸能界は特殊なところなので、コーヒー事業に身を置くことで、あらゆる身の回りのものが誰かの決断や試行錯誤でできているんだと学びました。大人としての挑戦のようなものをしていると、日々実感しています。
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「3年で年商1億円」という目標を掲げるところから始まった、竹内さんのコーヒー事業への挑戦。実際に動き出してみると、想像以上に多くの仕事があることに気づいたそうです。事務作業や資金のやりくり、時間の使い方 ──。アナウンサーとしての仕事や子育てと並行しながら事業を進める日々は、理想だけでは語れない現実の連続だったと言います。それでも、「知らないまま人生を終えていたかもしれないことができる喜び」を感じながら、竹内さんは今日も挑戦を続けています。
取材・文:石野志帆 写真:竹内由恵