漁師がみずから魚を直販する仕組みを考案し、ドラマ『ファーストペンギン!』のモデルにもなった坪内知佳さん。2人の息子を育てるシングルマザーでありながら、会社社長として働くなかで、かつての失敗から母親も仕事も「30点で合格」という、意外な考え方を持っているそうです。

『ファーストペンギン』が私の名刺がわりになった

坪内知佳
「次世代の女性経営者」としてメディアに取り上げられたり全国各地で講演したりしている

── 荒くれ漁師とぶつかりながら、漁業の常識を打ち破っていった坪内さん。2022年には坪内さんをモデルにしたドラマ『ファーストペンギン!』が放送されました。ドラマ化された当時の反響はいかがでしたか?

 

坪内さん:講演会などの依頼が相次ぎ、『ファーストペンギン!』が私の名刺がわりになりました。ドラマについては「私って、第三者が見るとこうなるんだな」と、笑って観ていましたね。

 

── ドラマでは坪内さんがモデルの主人公を女優の奈緒さんが演じられました。「荒くれ漁師」に物おじせず、ケンカ腰の姿勢で挑む姿が印象的でした。

 

坪内さん:「50年先の島の豊かな存続!」や「家業から企業へ!」などをスローガンに掲げたり、いつも一つの同じゴールに向かって「よりよくしたい!」とやり方やお互いの思いや考えをぶつけ合うことはありましたが、本当に憎くて喧嘩をしたことは一度もありませんでした。

 

── ドラマでは漁業の話が中心でしたが、現在は漁業の枠を超えて事業が広がっているそうですね。具体的にはどのような事業に挑戦されていますか?

 

坪内さん:自然と共存できるビジネスモデルをプロデュースしています。魚のアラを肥料にした農業にも取り組んでいますし、伝統工芸品の販売、海に負荷をかける脱色や染めを行わない和玉パールを使ったジュエリーブランドも展開しています。

 

── 2014年には株式会社GHIBLIを立ち上げました。従業員は、社員・パート全員が女性だそうですね。

 

坪内さん:特に女性を意識して採用したわけではないのですが、結果的にそうなりました。私自身がシングルマザーとして働き続けてきた経験から、オンライン出社を導入するなど、子育てしながらでも柔軟に働ける仕組みにしています。社員は全国各地に住んでいて、実際オンライン会議をするとカオスな状況ではあります(笑)。赤ちゃんや子どもたちの泣き声の大合唱です。それでもしっかり話せているので全然、問題ありません。

 

── 休みが必要なときのカバーはどうしているんですか?

 

坪内さん:誰かが「子どもが体調不良で」となったら、「いいよ、いいよ!タスクもらうよ」「お疲れ、休みな」と言って気持ちよくその人の仕事を巻き取る、そんな感じです。子どもを育てる女性ばかりだということによるデメリットはいっさいありません。おかげさまで会社の業績も伸び続けています。

 

── 社員旅行もよく開催しているとか。

 

坪内さん:年に2回開催していて、子連れ参加がスタンダードです。社員同士の親交や学びの場であると同時に、子どもたちにとっても「社会経験」になるよう意識しています。私たちは食品を供給している会社なので、社員旅行で星付きレストランを訪れることもあるんですが、参加を重ねるうちに子どもたちも自然と場にふさわしい振る舞いを身につけてくれるんです。