10代から世界を舞台に活躍した元プロサッカー選手の永里優季さんは、2025年3月に現役引退を表明しました。現在はシカゴで暮らしながら、20歳ごろの葛藤を記した手記の内容をSNSで公開するなど、悩み続けた自身のサッカー人生を言語化し、次の世代に伝えたいという思いを実現すべくアクションを始めています。
「書いて伝える」ことでサッカー人生最後を締めくくる
── 10代からサッカー日本女子代表として活躍された永里さんですが、最近になって20歳ごろの日記をSNSで公開されました。すでに世界の舞台で活躍していた当時の、「サッカーはもともとやりたくなかったけれど、求められていることに応え続けるなか、15年目くらいでようやく楽しいと思えた」という述懐が印象的でした。
永里さん:20歳くらいのころは、自分でも苦しかったと思います。なんというか、平和ではなかったんですよね。当時の心境を綴ったノートを振り返って読んでいても、今はこういう状態にはなれないなって思うくらいで。当時は、その悔しさに固執してしまい、次に進めていない状態がすごくイヤだったので、どうしたら切り替えられるのかを常に考えながらやっていました。今は、そういったノートの内容も含めて、自分のサッカー人生、一つひとつの体験を次の世代に伝えていくことが、これからの自分のミッションだと思っているんです。

── まさに努力が実を結んだサッカーを2025年に引退された今、セカンドキャリアについてはどうお考えですか?
永里さん:セカンドキャリアについて、そこまで真剣に考えてきたわけではないのですが、いまはシカゴに住んでいるので、いずれは日本と往復しながら日本のために貢献できたらという思いがあります。そのためにも、元プロサッカー選手として自分の経験や思いを言語化していくことにはこだわっていきたいです。今はサッカー人生を振り返りながら、最後をそうやって締めくくれたらなと。今は、自分の持ち味を活かしたプレーや、できないことがうまくできるようになった理由などを書き残すしていく作業をしています。
──「言語化し、書いて伝える」ことが、永里さんにとって大事なミッションなのですね。
永里さん:そうですね。これまで自分が体験してきたサッカーに必要な要素を、自分の言葉でしっかりと次の世代に伝えていきたいという思いがあります。
最近は、子どもたちにオンラインでサッカー指導や対話を通したマインドセットの育成プログラムを行ったりしています。地元のシカゴでも、子どもたちのパーソナルトレーニングにかかわっていて、体の使い方や技術的なスキル向上に有効な考え方を伝えています。技術が伸びていく体験をさせてあげて、サッカーの喜びを伝えていけたらいいですね。
── 現在、サポートしている子どもたちに、将来、ワールドカップやオリンピックに出場してほしいという思いはありますか?
永里さん:そういう気持ちは特にないんです。どちらかというと、子どもたちには、普段の練習や試合に活かしつつ、自分の目指す目標達成につなげてほしいという思いで活動しています。
もちろん、子どもたちに「世界を目指したい」という思いがあれば、喜んでサポートします。ただ、私がいちばん大事にしたいのは、子どもたちが「なぜサッカーをするのか」「サッカーを通じて何をどうしたいのか」をクリアにすることなんです。誰にでも、いつかサッカーを辞めるときがくると思います。子どもたちには、その後の人生もしっかりと自分の軸をもって生きていける人になってもらいたいです。
── 永里さんご自身が、大事にされている軸はありますか?
永里さん:自己表現したいという思いはすごく強くあると思います。そのためには、とことん考え抜いて言葉にしたい。考え抜いたことでなければ言語化は難しいと思うし、自分も人に伝えるのは怖いって思うから、しっかりと突き詰めて考える。そのプロセス自体が自分の軸になっているようにも感じます。
実は、人前で話すことがすごく苦手だったんですよ。だから、恥ずかしい思いをしたし、誤解されることもあったと思います。ただ、文字を書くことは昔から好きだったから、自分の経験や感情を整理しながら言語化していくことで、自分の軸のようなものができたのかなという感触はあります。

── 公開中の日記にあった「探究したい、成長したいという気持ちが強かった」という言葉も印象的でした。
永里さん:そうですね。私の場合は、自分の探究欲や成長欲の対象がたまたまサッカーだったんだと思います。だから、約20年も続けることができたのかなって。