6歳のころ、家族5人で西アフリカ・ガーナから日本に移住してきたミュージシャンの矢野デイビットさん。肌の色が違うことで警官に呼び止められたり、知らない人から暴言を吐かれたり、理不尽な経験をたくさんしてきたそう。ただ、そんな経験によって感謝していることがひとつあるといいます。
6歳で「父と肌の色が違う」と初めて気づいた
── 6歳のころ、生まれ育ったガーナからご両親とお兄さん、弟さんの5人家族で日本に移住されたそうですね。当時の日本について印象に残っていることはありますか?
矢野さん:家族で日本に来る少し前、父が僕に1枚の写真を見せてくれたんです。日本の友人や知人が写されたものでした。たぶん、僕がいきなり日本の人たちと会っても驚かないようにと考えてのことだったのだと思います。
でも、僕は初めて自分と肌の色が違う人たちを見て怖くなり、「お父さん、怖いよ!僕、日本が怖いかもしれない」と言って泣いてしまったんです。そんな僕に父は「でもデイビット、見てごらん。この人たち、お父さんの肌の色と一緒でしょ」と声をかけてくれて。僕は急にホッとして「本当だ、じゃあ大丈夫だね」って答えたのを覚えています。

いま振り返ると、子どもっておもしろいなと思うのですが、僕にとって父は、僕が生まれたときからずっと「父」という存在以外の何者でもなくて。肌の色が自分と全然違っていることは、気にもとめませんでした。父に日本人の写真を見せてもらって、自分と父と肌の色が違うことに初めて気づきました。それと同時に、「パパはパパだから」と強く意識できたんです。