SNSで「推理合戦」巨大力士が電車と動きが合った訳

── 巨大モニターそのものの設置も大変だったのではないですか?
電通・アタリチーム:設置したLEDモニターは、横18メートル×縦2.5メートルという大きさで、これほど巨大なものを倒れないよう安全に設置するには、土台作りからしっかりした構造設計が必要でした。実際の設置作業は約12時間で終わりましたが、駅構内という特殊な場所のため、準備や安全チェックがかなり多く、普段のLED広告設営よりもずっと慎重な対応が求められた工程でした。
── 電車の入線に合わせて力士を動かすとなると、秒未満の単位でタイミングを合わせる必要がありますよね。どのように実現したのでしょうか?
電通・アタリチーム:センサーによって車両の入線を感知することで、連動してモニター内の映像出力のスイッチが押され、魔人力士が動きだす仕組みになっています。電車の動きに合わせて演出を変化させるためには、入線を正確に検知する仕組みが必要でした。まずはシミュレーター上で検証を重ねながら実装を進め、センサーの配置や車両への照射方法については、JR東日本様と綿密に調整を重ねました。

── 誰も見たことがないような演出は、インパクトがありました。
電通・アタリチーム:SNSでは「運転手さんが映像に合わせて電車を止めてるの?」「裏で手動で操作してるの?」といった推測の投稿も多くあり、技術的な挑戦をしたチームとしてはそうした反応を見るのもすごくうれしかったです。
── 電車の動きと連動させるという発想はどこから?
電通・アタリチーム:東京ドームのバックスクリーンに横幅が125メートルほどの巨大ディスプレイがあるのですが、それを見たときに「飛行機や電車といった乗り物の動きと連動する巨大OOH(屋外広告)ができないだろうか」というアイデアを思いついたんです。今回、両国駅の3番線が幅広く使えるということで「横長のディスプレイを設置すれば、力士が電車を止める演出ができそう!」と思い立ち、企画しました。
── 力士のキャラクターも一度見たら忘れられないくらいのインパクトがあります。
電通・アタリチーム:初手のインパクトはもちろん、力士らしさとPlayStationらしさの両立を意識しました。実は当初、力士は巨大ではなく、等身大の大きさで登場することを想定した企画だったんです。しかし、両国駅のホームを広く使ったスケールでの実施を考えると、力士もそのスケールに負けないインパクトが必要だということになり、巨大化させました。
また、パッと見たときのインパクトを強めるためPlayStationのイメージカラーに近い青を肌の色に採用しました。インパクトがありつつも力士らしさを損なわないというあんばいに気をつけながら、このキャラクターデザインにたどり着きました。
── 反響はどのようなものがありましたか?
SIE担当者:Xを中心にSNS上で大きな反響がありました。実際に現地に見に行かれた方も多くおられたとうかがっております。今回の広告のギミックが注目されただけでなく、「PlayStationの広告である」と認知されて拡散されたことはよかったと思います。
電通・アタリチーム:日本で大きな反響をいただいたことはもちろんありがたいことなのですが、海外まで大きく反響が広がったのはかなり想像以上でした。グローバルキャンペーンでの施策であったので、「これは日本にしかできない!」という声や「これぞ日本ならではのリアルとデジタルの融合」といったような、PlayStationのみならず日本を誇ってもらえるような反響につながったのが、とてもうれしかったです。規模が大きく、日本らしく、説明不要で瞬時に理解できる演出にできたことが、世界中で拡散に繋がったのだなと思います。
取材・文/石野志帆 写真提供/株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント