妊娠中はつねにトイレにこもって泣いていた
── 気持ちを整理するのは大変でしたよね。
嫁コンさん:はい。その後も、妊娠しては流産して…ということが4回ありました。だからこそ、長男を妊娠したときは「何が起こるかわからない」という不安が強くて、妊娠中はとにかく安静にしていました。つわりもひどいうえに毎日の緊張感が重なって、トイレにこもってよく泣いていましたね。妊娠中のメンタルは本当にボロボロでした。
そんな状態でしたが、無事に予定日を迎えることができたんです。お産自体はとてもスムーズで安産。長男は元気に生まれて、その後もすくすくと育ってくれました。
── よかったです。
嫁コンさん:そこから2年後に、再び妊娠しました。安定期にも入って性別が女の子だとわかったある日、夜中に急に破水のような感覚に襲われたんです。当時、夫は鉄道会社に勤務していて、夜勤で不在でした。私の母につき添ってもらい、慌てて病院に向かいました。
病院に着いたときには、すでに医師から「危ない状況かもしれません」と告げられていました。その後、夫が病院に駆けつけてくれたのですが、診察台に上がるころにはお腹の中の子はすでに亡くなっていて、そのまま分娩することになりました。
死産となったわが子を迎えるのは本当につらくて、しばらく現実を受け止めることができませんでした。でも、夫と「この子を、2人でしっかり迎えてあげよう」と話し合ったんです。分娩し、赤ちゃんと対面しました。とても小さな体でしたが、指の形が5本しっかりできていて、お腹の前で手を合わせていました。その姿は今でも忘れられません。
家族の前では明るく振る舞ってきたけれど

── その後、どうされたのでしょうか。
嫁コンさん:その後、しばらく入院をしました。少しでも思い出すと泣いてしまうので、病室では何も考えないようにして過ごしていました。夫は毎日病院に来て、明るい話をたくさんしてくれました。仕事をしながら病院にも通い、長男のお世話もしてくれて。本当に支えられました。
── 退院後の生活はどうでしたか?
嫁コンさん:退院してから4、5か月くらい経ったころでしょうか。夫が私を元気づけるために「家族3人でグアム旅行に行こう!」と誘ってくれたんです。家族で行く初めての海外旅行で、すごく楽しかったし気分転換にもなりました。夫の優しさや明るさに救われました。長男の存在もすごく大きかったです。長男がいてくれたからこそ、「頑張らないと」という気持ちになれました。家族の支えもあって、少しずつ前を向けるようになっていきました。
ただ、今でも忘れられないことがあって。そのころ、夫が私の頭頂部の毛がごっそり抜けていることに気づいたんです。「髪が抜けているよ」と。慌てて確認したら、頭頂部の髪が丸く抜けてなくなっていました。家族の前では明るく振る舞っていたのですが、心の奥ではずっとつらくて、無理をしていたんだと気づきましたね。
── 時間がどれだけ経っても、気持ちを整理することはできないですよね。
嫁コンさん:そうですね。それから3年後に、長女を妊娠しました。やはり妊娠中はずっと気が抜けない状態でした。でも、長女のときも大きなトラブルはなく、無事に生まれてくれました。長男と長女には「お空の上に、とても大切な兄弟がいるんだよ」と伝えています。その子のおかげで、みんなもいるんだよと。神社やお寺にお参りに行くときは、家族みんなでその子の幸せを祈っています。思い出すと胸の奥が苦しくなり、今でも涙が出ます。でも、決して忘れてはいけない存在として、家族でその子の幸せを願い続けています。