すべての経験が役に生きてくる

── 乳がんの発覚もあって、仕事との葛藤はしばらく続いたのでしょうか。

 

赤間さん:そうですね。葛藤の時間って本当に苦しいです。私なんか、芝居が好きなことも苦しかったというか、芝居が好きじゃなかったら単純にほかの役者さんを応援して、映画も純粋に楽しめてとラクに生きられたのに。なんで芝居が好きなんだろうって思ったりもしました。

 

なぜ芝居が好きなのか、自分でもわからないのですが、ずっと芝居のことを考えているんですよ。起きている間、生きている間じゅうというのか。いい芝居ができる役者に憧れがあるから、「あんないい役者になるにはどうすればいいんだろう。1mmでも近づきたい」って考えます。

 

── 役者さんは、生涯現役になれる職種のようにも感じます。

 

赤間さん:そうなんですよ。健康でさえいれば、いろいろな年齢の役があるので。ずっと勉強し続けられるいい仕事だなって思います。

 

私のマインドは「ほぼ主婦」。350日くらい、朝、昼、晩とご飯を作って、お弁当作って、洗濯して掃除して。家で休む暇はありませんが、そういった経験が役にも生きてくると思いますし、主婦の仕事をずっと大切に続けてきた時間は、役者としての自分にとって大きな糧になっています。

 

── ムダな時間はなかったということでしょうか。

 

赤間さん:はい。多分、誰にも当てはまることだと思います。ムダな時間ってなくて、「あのときのあのことがあったから今がある」と回収されていく。だから、そのとき、そのときを一生懸命生きてさえいれば、必ずまるく収まるんじゃないかな。焦ることも大事だし、葛藤することも大事だと思います。

 

※本インタビューは2025年11月25日に行ったものです。原田眞人監督は12月8日に逝去されました。心よりお悔やみ申し上げます。

 

取材・文/高梨真紀 写真提供/赤間麻里子