臨月で主人がケガで入院「本当に大丈夫ですか!?」

── サッカー選手という職業柄、ご家族が風邪をひいたときはそういった対応にならざるを得ないと思いますが、日ごろの育児に関してはどのように役割を分担されていたんですか。

 

中村さん:どのお宅のお父さんも最初は何をやっていいかわからないと思うんです。私も最初から「あれをやってほしい」とか「これをやってほしい」とお願いできたわけではないのですが、子どもが1人、2人と増えるにつれて、そのあたりのすり合わせは夫婦間で自然とできるようになりましたね。

 

プロサッカー選手は、たとえば練習は午前だけで午後はフリーだったり、意外と家にいる時間が長いので、会話をする機会が多かったのはよかったなと思いますね。

 

── 現在は長男は高校2年生、長女は中学3年生、そして次女は小学校4年生に成長しました。これまでの子育てを振り返り、特に大変だと感じた時期はいつごろでしたか?

 

中村さん:長女が生まれる直前、主人が試合で相手選手と接触し、下顎を骨折することがあったんです。そのとき私は臨月だったんですが、主人が入院している病室の補助ベッドに泊まっていました。

 

骨折や手術自体が主人にとっては初めての経験でメンタル的にかなり打撃を受けていましたし、その年はワールドカップイヤーで、顎を骨折して2か月後には最終選考メンバーが発表されるという、とても微妙な時期でした。最初はストローで流動食を吸うというような状態だったので心配で泊まることになったんですが、看護師さんからも「本当に大丈夫ですか!?」とすごく心配されていた記憶があります。

 

長女が生まれたときも、長男が1歳半でとても手がかかる時期だったのですが、4月に長女が生まれたあとすぐにワールドカップがあり。日本代表の合宿や遠征で主人がまったく家にいなかったので、記憶にないくらい大変でした。

 

 

プロアスリートの夫のサポートと子育ての両立は想像以上に大変だったけれど、「主人と結婚できてよかつたと思います」という中村さん。長女の妊娠中はご主人が大怪我をし、大きなお腹を抱えて病院に通い、自宅ではワンオペ状態。さらに2015年には中村さんが3人目を妊娠中に緊急入院。当時、ご主人の憲剛さんは大変だと思う余裕すらないほどの状況だったと言いますが、その経験は中村加奈子さん、そしてご主人にとっても人生の大きなターニングポイントになったそうです。

 

取材・文/石井宏美 写真提供/中村加奈子