タレント転身も仕事の紹介がなく決断

人気バラエティ番組『沸騰ワード10』で人気を得た風岡さんは、東京都内の芸能事務所に所属し、タレント活動をスタート。直売所は2024年夏に閉店、タケノコ農家引退を決断して臨んだわけですが、予想もしない事態が待ち受けていました。

 

「芸能事務所からの仕事の紹介がいっさいこなかったんです。何もできないまま月日が過ぎ、不安ばかり募っていきました。個人のつながりでポツポツと仕事を得られたものの、わずかな収入にしかならない。途方に暮れましたね」

 

じつは直売所の閉園を決めた2024年5月、パートナーとして長年自身に寄り添ってきた元妻の友紀さんにステージ2の乳がんが発覚し、2か月後に手術を受けていました。このとき芸能事務所とは契約済み。仕事をもらえるから安心と思っていたところが、肩透かしを食らってしまったのです。

 

「そのころ、父親も病気で倒れて手術をしていて。自分の生活はもちろん、家族やパートナーの面倒を見て治療を続けるには、このまま仕事が来るのを待っているわけにはいきませんでした。

 

いっぽうで、昨夏の直売所閉店の際、全国から多くのお客さんがお別れの挨拶に来てくださり、通信販売で顔が見えなかったお客さんの顔と名前が初めて一致して、感動を与えてくれたファンのみなさまの期待に応えたい思いもありました。それが今年2月、タケノコ農家への現役復帰を宣言した大きな理由です」

 

2025年2月にタケノコ農家への現役復帰を宣言。直筆で思いを綴った

だからといって農家タレントの道をあきらめたわけではありません。直売所はシーズン中のみ短時間営業で売り切れごめんスタイルの「気まぐれ風岡たけのこ園」として再開するいっぽう、農家タレントはフリーランスで活動していくことを選択。地元の活性化を胸に秘め、再出発しました。

 

 

タケノコ農家として農業再開を決意すると同時に、フリーランスとして芸能活動を継続することを決めた風岡さん。現在マネージメントを務めるのは、元妻でパートナーの友紀さんです。二人三脚で歩み始めた芸能の道。2025年3月には、風岡さんは地元スーパー『食鮮館TAIYO』とプロモーション契約を結ぶことに。毎週チラシに登場するほか、1日店長を務めるなど、精力的に活動を続けています。

 

取材・文/百瀬康司 写真提供/風岡直宏