きょうだいげんかがうらやましかった

── 妹さんには、どのような障がいがあるのでしょうか?

 

葉一さん:2歳下の妹には知的障がいと発達障がいがあります。会話は成り立たないですし、日常生活のほとんどのことを自分ひとりではできません。絶対的に介護や補助が必要な状態です。身体的に寝たきりではないですけれど、体が小さくて、大人になったいまでも小学校高学年くらいの体格です。

 

── 土日も妹さんの面倒を見るために部活へ行けなかったというお話がありました。どんなお世話をされていたのですか?

 

葉一さん:基本は母親が世話をしてくれていたので、両親がいない時間に見守りをしたり、食事の際は毎回、何かしらこぼしてしまうので、母と一緒に片づけたりといった補助が主でした。

 

── 障がいや病気を持つ兄弟姉妹がいる「きょうだい児」として育って、いちばん大変だったことは何ですか?

 

葉一さん:よく聞かれることなんですが、答えに困ってしまうんですよね。なぜかというと、きょうだいに障がい児がいるのが当たり前で育ってきているから、すべてが日常なんです。強いていうなら、旅行や外食が一般の家庭より少なくなってしまうことでしょうか。妹はけっこう大きな声で騒いでしまうので、公共交通機関を利用することや、お店で食事をすることが難しいんです。あとは、同じ理由で友達を家に呼べなくて、必ず遊びに行かなくちゃいけないという状況はありましたけど、大変かというと違う気もしますし…。でも、ほかの家庭がうらやましかったことならあります。

 

── どんなことがうらやましかったのでしょうか?

 

葉一さん:きょうだいげんかです。妹とは会話ができないし体力差もあるから、きょうだいげんかができないんですよ。だから妹がいてもひとりっ子のような感覚なんです。それはけっこう、自分のなかに重く残っていました。

 

特に学生時代、思春期になると、たとえば友達が兄ちゃんとけんかして「兄ちゃんなんかいなければいいのに」みたいなことを言うじゃないですか。それを聞いて心底うらやましかったし、何なら胸の底でムカついてました。「兄ちゃんとけんかできるのを当たり前だと思うなよ」と。