「きょうだい児」とは普通に接してほしい

── お母さんから、妹のためにどのような兄でいてほしいと言われたことはあるのですか?

 

葉一さん:幼いころから「いいお兄ちゃんでいてね」というのは、よく言われていました。「あなたが妹を守るのよ」と。それは妹に障がいがあるからというより、お兄ちゃんとして、という意味で素直に受け取っていて、いまもその感覚は変わっていませんね。そのせいか反抗期もなかったんですよ。

 

── きょうだい児の方を取材すると、恋愛や結婚に対して不安だという話を聞くことがあります。

 

葉一さん:両親から「あなたは周囲と違うから」ということはあまり言われなかったので、そこまで意識したことはなかったんです。高校生で彼女ができたころから「あなたが将来、結婚するときは、妹は私たちがちゃんと施設に入れて面倒を見るから、気にしなくていいからね」と両親が言ってくれていたので、不安にならなかったのかもしれないですね。過度に頼られすぎたことはないし、「絶対に不便をかけないようにするから、仕事も恋愛も好きにやりなさい」と言われて育ちました。

 

── 素敵なご両親ですね。障がいを持った方やそのご家族に対して、どんなふうに接してほしいという思いはありますか?

 

葉一さん:これに対しては「普通でいてほしい」ということに尽きますね。日本だと特に、日常生活のなかで障がいを持っている人との接点があまりないから戸惑うのもわかるんですけど、障がい者だから、その家族だから特別な接し方をしよう、と意識してほしくないですね、個人的に。妹に障がいがあるからこういうことを言っていいのかな、言葉に気をつけなくちゃいけないな、と気をつかわれると、こちらも気をつかってしまいますし。できるかぎり普通に接してほしいです。

 

 

中学時代はいじめでつらい日々を過ごした葉一さんですが、高校に入ると友達や恩師に恵まれ、教師という夢を見つけます。ですが大学卒業後は「いったん社会を見たほうがいい」と教員にならず、営業職を選択。仕事内容がハードだったため、学生時代に発症していた腎炎を悪化させて7か月で退職することになりました。その後、塾講師を経てYouTuberに。現在は登録者数217万人を超える教育系の人気YouTuberとして活動を続けています。

取材・文/富田夏子 写真提供/葉一