母と「自分らしくいられる高校」を探し当て
── その後、ギターが学べる高校に進学されました。

Lisa13さん:母と一緒に学校の情報誌をいろいろチェックしていて見つけたんですが、その高校にはギターを勉強できる専攻コースがあって。午前中は普通の授業で、午後にギターや音楽の授業が受けられるんです。いちばんの決め手は、「甲斐バンド」の田中一郎さんと、ハードロックメタルバンド「BOWWOW」の斉藤光浩さんっていう、hideさんが大好きだったギタリストが先生だったこと。もう絶対ここに行くしかない!って思いましたね。
実際に高校に入学したあとは、中学時代とは真逆の個性を認めてくれる環境で。ギターにも勉強にも打ち込めて、本当に毎日が充実していました。結局、皆勤賞で表彰され、首席で卒業することができました。
── それはすごいです! 高校卒業後にバンドデビューされていますが、音楽を仕事にしようという気持ちはいつごろ芽生えたのでしょうか?
Lisa13さん:高校が渋谷にあったので、授業が終わると原宿によく遊びに行っていたんです。そこでファッション系のメディアに取り上げられるようになって。今でいうインフルエンサー的な活動を始めることになり、企業に就職というよりは、ギターをやりながらモデルなどファッションに関わるお仕事ができたらいいなと考えていました。
ただ、高3のときに学園祭でバンドを組んだらすごく楽しかったんです。それで、ソロもいいけどバンドやりたいかも…という思いが強くなっていたところに、「これから立ち上げるバンドでギタリストを募集しているよ」と声をかけてもらい、これはチャンスだ!と。それで、2013年に結成したのが、「Moth in Lilac(モス・イン・ライラック)」というバンドです。そこからオリジナル曲の作曲や作詞を本格的に始めたんですよ。
── いい流れにのって音楽業界に飛び込んでいったんですね。プロのギタリストとして頑張らなければというプレッシャーは感じなかったですか?
Lisa13さん:演奏のレベルを上げるための練習は苦じゃないのでいくらでもできるし、パフォーマンスに対してプレッシャーは感じたことはないんです。それよりも、バンドを盛り上げていくために、「どうやってこのイベントに出るか」とか「どうやったら海外ツアーが実現できるか」とか、マネタイズのためのプランや戦略を考えるのが大変です。就職こそしていないけど、ギタリストとしてやっていくにしても、ビジネス面で通用する考え方が必要とされていると感じます。

── Lisa13さんの音楽活動について、ご両親はどのように見守ってくれていますか?
Lisa13さん:今は父と母がマネージャーのような感じで支えてくれています。特に母は、私の食事管理と肌管理を担ってくれていて(笑)。家族みんなで、一緒に同じ方向を向いて進んでいるところです。
…
プロのギタリストとして活動するなか、2021年に開催された東京パラリンピックの閉会式にキャスティングされ、ギターを演奏したLisa13さん。同じ障害をもつ子の親から「勇気をもらった」と反響が大きかったことから、「義手ギタリスト」という肩書で発信をスタートします。しかし、多様性が叫ばれる社会で、いまだに障害者に対する世間の“見えない壁”を感じる瞬間がある、と話してくれました。
取材・文/小新井知子 写真提供/Lisa13