先天性四肢障害で右手首から上を欠損している義手ギタリストのLisa13(リササーティーン)さん。小学校6年生でギターに出会い、自分の好きな世界を表現することに夢中になっていきます。中学時代に障害にまつわる偏見にさらされた経験を経て、音楽を仕事にしていった道のりを聞きました。
個性を理解してくれない先生に母が伝えた言葉
── 先天性四肢障害で右手首から上を欠損し、爪ほどの小さな指しかない状態にもかかわらず、hideさんと布袋寅泰さんに憧れて小6でギターを始めたそうですね。
Lisa13さん:はい、ギターに夢中になっていた私を両親が応援して、いろんな形でサポートに回ってくれていました。なので、両親に対する反抗期はまったくなく、ここまできました。
ただ、中学校に入学してからは、ちょっとシンドい思いをしました。周囲が私の右手の障害をそのまま受け入れてくれ、平和だった保育園や小学校とは違って、担任の先生が私を理解しようとしてくれなくて。
当時、大好きなロックの影響をモロに受けていたので、ファッションや美術の時間に描く絵にもその世界観を表現したい時期だったんですよね。それで、黒をベースに激しい音楽のイメージで絵を描いたら、先生から「そういう表現の仕方はやめなさい」って言われて。スプラッターとか残酷な内容でもなかったのに、何がダメなのかまったくわかりませんでした。
当時は2010年ごろで、「音楽をやってる=不良」みたいな風潮がまだあった気がします。そのせいなのか、先生は「右手がない反動で、不良になったんじゃないか」って。私自身は「いや、まったく関係ないんですけど。そこに右手をからめなくていいじゃん」って、とにかく不思議で仕方なかったです。
そんな感じの先生なのに、制服のセーターの袖で障害がある右手が隠れているのを見つけて、「なんで隠しているんだ」って言ってくる。指が短いから袖に隠れるだけで、わざわざ隠しているつもりはないのに。そういうチクチク刺すような言葉をしょっちゅうかけられていました。
── 先生の言葉は、「反抗せず、みんなと同じようにしていなさい」というふうにも聞こえます。
Lisa13さん:そうですね。でも、先生から言われたことを母に話したら、母も納得がいかなかったみたいで。母はとにかく前向きで、グイグイいくタイプなんですよね(笑)。私の生徒手帳に「先生のお言葉は、どういう意図なんですか?」って短いメッセージを書いて、先生に渡しなさいって。
── 実際に先生に渡したら、どんな反応がありましたか。
Lisa13さん:引いちゃってましたね。「いやぁ、そんな深い考えはなかったので…」ってはぐらかされて。そのあとは、逆に何も言われなくなり、いきなり腫れ物に触るような対応に変わりました。
── 先生がそういう対応だと、クラスの雰囲気にも影響があったのでは?
Lisa13さん:クラスの子たちにも関わりづらいと思われたみたいで、いじめとかはないものの、みんな一歩引いてる感じはありました。保育園や小学校のときの「人と違うことはおかしくないし、みんなそれぞれでいいんだよ」っていう環境とまったく逆で、個性をつぶしにかかってくるというか…。先生に対してあからさまに反抗することはなかったけれど、「そういう一方的な見方しかできないんですね」っていう引いた姿勢で3年間を過ごしました。
── そういう状況でも、仲のいい友達はいたのですか。
Lisa13さん:当時から音楽好きという共通点でつながっている友達がいて、本当の私をわかってくれる子はちゃんといたので、友達には恵まれていましたね。好きなものが一緒だとやっぱりわかり合えるというか。好きなものをアピールしておいてよかったなって思います(笑)。