再びステージに戻ってやりきりたい

── 半年間の静養を経て、今年の春に舞台に復帰されました。復帰に迷いはなかったですか?

 

池田さん:闘病当初は「ショーには戻らないんだろうな」と思っていたんです。でもそのときも、夫の言葉が奮い立たせてくれました。「この終わり方ではきっと後悔する。ちゃんと戻って『やりきった』と思ってから辞めたほうがいい」と。

 

── 人生の節目で、いつも旦那さんの言葉が背中を押してくれたんですね。

 

池田さん:ケンカもしますが、いいパートナーだなと思います。私がツアーに戻るということは、夫はアメリカの定住先でワンオペで息子を世話することになるんです。自分は大変なことが増えるのに、私の復帰をあと押ししてくれて本当にありがたかったですね。

 

── いざ舞台に戻ったとき、周囲はどんな反応でしたか?

 

池田さん:上司をはじめ、同僚たちが「カズハが帰ってきたー!」と、ものすごく喜んでくれました。自分の居場所があるというのは、なんてありがたいんだろうと感じ「この人たちにちゃんとお礼を言わないで辞めてはいけない」と思いましたね。

 

上司以外に病気のことは話していなかったので、復帰してから「実は…」と打ち明けました。そしたら「僕の母も乳がんだったんだよ」とか、「早く見つかって本当によかったね」とか、みんなが自然に声をかけてくれて。実は、がんを経験して戻ってきた仲間もいるんです。ミュージシャンの方でステージ3の肺がんを経験して完全復帰した人や、白血病の治療を続けながら舞台に立っていた人もいました。そういう人たちが「無理しないでね」「疲れたら休みなよ」と声をかけてくれて、すごく心強かったです。

 

── 素敵な職場ですね。


池田さん:国籍も年齢も違う人が集まっていますが、病気や背景の違いもまるごと受け入れる文化があると思います。「病気になったら終わり」という感覚がいっさいないんですよね。みんな「また戻っておいで」って言ってくれる。そのあたたかさに何度も救われました。

 

── 体力的に不安はなかったですか?
 

池田さん:身体はむしろ好調でした。食生活をはじめ、ライフスタイルを大きく見直したことが大きかったと思います。もともと仕事も生活も頑張りすぎてしまうタイプでしたが、物事をあまり深刻にとらえすぎないようになってからは、気持ちがグッとラクになりました。体だけでなく、心のコンディションも整っていたと思います。