公演中にがんと告知され…

池田一葉
池田さんが演じたのは「半分が生身の女性で、半分は機械」という役ⒸMathew Tsang

── 紆余曲折を経てシルク・ドゥ・ソレイユ入りし、家族を帯同して世界中を回る日々を過ごされていたなか、昨年乳がんを患ったとのことでした。

 

池田さん:去年の3月、日本に一時帰国しているときに受けた人間ドックで「乳がんの再検査をしてください」と通知が来たんです。カナダに滞在中でしたが、しこりもなく、ほかの自覚症状もいっさいなかったので「なにかの間違いだろう」と思いながら再検査しました。するとお医者さんから「悪性です」と言われてしまって…。

 

── 普段通り公演もされていたなかで、衝撃でしたよね。

 

池田さん:最初は実感がなくて「はぁ、そうですか」という感じでした。でも徐々に「悪性…ということは、乳がんだよね…?」と実感が湧いてきて。病院を出た途端「ワーッ!」と泣いて取り乱しながら、夫に「がんだった」と電話をしました。

 

── 旦那さんの反応はどうでしたか?

 

池田さん:夫もショックだったと思いますが、私を落ち着かせようとしてくれました。ただ、手術するまではがんの進行状況がわからなくて。軽いケースから重いケースまで可能性があり、先がまったく見えない状態だったんです。「死ぬんだ…私」と思い詰めることがありました。それに、もし抗がん剤や放射線治療が必要になったら、これまでのような生活が送れずステージに立てなくなるかもしれないと思い、ものすごく恐怖でした。

 

── そんな状況でも、公演には出られていたわけですよね。

 

池田さん:毎日仕事があるなかで、すごくきつかったです。上司に「こういう結果が出ました」という報告はしましたが、告知された次の日もステージに立ちました。でも家に帰ると、どうしてもネットで検索し過ぎてしまって…。「乳がんは10年以上経っても再発の可能性がある」というのを見て、落ち込むこともありました。「もし手術が成功したとしても、私はこの先ずっと再発の恐怖と戦わなくてはいけないんだ…」と。

 

── そこからどういう経過を?

 

池田さん:当時はカナダのモントリオールにいて、滞在期間が2か月と決まっていたので、「手術するなら早めにしよう」ということになったんです。ただ海外では医療費が非常に高く、加入していた保険が適用されるかどうかの確認と交渉にとても時間がかかりました。保険がおりなければ手術は受けられなかったのですが、手術前日のギリギリになってようやく適用が決まり、なんとか受けることができました。