テレビがきっかけで28年ぶりに母親と再会するも…

清人
26歳のころ。髪の毛が青くない時代の清人さん

── それきり、再会叶わずですか?

 

清人さん:実は、テレビ番組の企画がきっかけで再会したんですよ。17年前、ダウンタウンさんの番組で親子漫才の企画があって親父と出演したのですが、母親がそのテレビを見ていて、吉本興業に電話をしてきたんです。当時バッドボーイズで『AKBINGO!』というAKB48のバラエティ番組のMCをしていて、その番組収録終わりに吉本の社員から「行方不明だった清人さんのお母さんから連絡がありました。元気でやってるならいいですと連絡先も言わずにきられてしまったんですけど…、念のため着信履歴はメモしてあります。電話するかどうかは清人さんの自由です」と。

 

── 清人さんが芸人を続けていたからこその偶然ですね。それで電話は…?

 

清人さん:すぐに電話をかけました。小学生以来28年ぶりに話したら、母親は僕の中の理想化されたのとは全然違うガラガラ声で「きよちゃん、元気?私のこと許してくれる?」と言うわけです。僕としては母親を憎んでいなかったので「ずっと許してるよ」と答えました。すると母親が「きよちゃんね、赤ちゃんのときにおっぱいが好きでね、右乳房をすごい勢いで飲みよったとよ。それでもたりなくてね、両手でね、両方の乳房をつかんですごい勢いで飲みよったとよ。…今でもそう?」って言ってきたんです…。最悪でしょ。28年ぶりの電話でいちばん最初に言ったセリフがこれで。こんな下ネタ言うなんて、やっぱり変わった人だったんだなと思って、うれしい気持ちが一気に冷めました。

 

── エピソードが強すぎます(笑)。

 

清人さん:その話を聞いた『AKBINGO!』のプロデューサーが、じゃあ番組で感動の再会企画をやろうと提案して、5人くらい母親と同じような年齢の女性を並べて、本物の母親をAKB48のメンバーが当てる、という企画をやりました。

 

── そのときはどう感じたんですか?

 

清人さん:僕としては出会った瞬間、やっぱり血のつながりを感じて震えるくらいに感動して、抱き合って泣くくらいの想像をしていたんですよ。でも、電話の声や話す内容もそうですけど、自分の中の理想の母親像みたいなものができ上がりすぎていたせいか、実際はそんなきれいな話にはならないですよね。

 

番組の収録終わりに、スタッフが気を利かせて「親子水入らずで食事に行ってきてください」と店を予約してくれたんですけど、気まずいからふたりは絶対に嫌だとチーフプロデューサーの女性についてきてもらったんです。ピリからの鍋料理屋さんで、3人で会話も弾まず食べていたら、母親が口をつけた食べかけのお皿を僕に向けて「これちょっとからいわ。きよちゃん、食べて」と言ってきたんです。でも僕としては、一緒に住んだこともごはんも食べたこともない人だから、いきなりそんな人の食べかけをもらうのは無理!ってなって。なかなか理想と現実は違いましたね。