10代のころ、ちょっとした女友だちとの人間関係に疲れたことがあったと話す、加藤シルビアさん。誰にだって職場や地域などで、対人関係でしんどくなるときはあります。じゃあ、そんなときどう解消すればいいか。加藤さんの経験はひとつの考える物差しになるでしょう。

いまいる場所がすべてではないと知って

── 元TBSアナウンサーの加藤シルビアさんは、中学1年のとき、母の故郷・ポーランドで1年間を過ごしました。そこで異なる文化や価値観に触れた経験により、「今いる場所がすべてじゃない」と知ったことが、のちの自分を支える大きな糧になったといいます。ポーランドでの暮らしは、どのようなものだったのでしょうか。

 

加藤さん:私が1999年にポーランドで暮らしていたころは、国自体に現在のような豊かさはまだなく、経済的に厳しい時代でした。街では生活に困っている人の姿を目にすることもあり、日本のように最新のものがあふれている環境とはまったく違っていて、カルチャーショックを受けました。

 

いまでもよく覚えている光景があります。同い年の親戚の女の子が「誕生日に買ってもらったの!」と誇らしげに見せてくれたのが、電卓だったんです。ポーランドの子どもたちが電子機器というだけで大喜びするなか、私はすでにおもちゃの電子手帳を持っていて、その差に衝撃を受けました。日本から持ってきた『りぼん』や『なかよし』の漫画を読んでいると「なんてきれいな漫画なの!」と声をかけられるなど、持ち物ひとつとっても驚きと憧れの眼差しが向けられる。日本の成熟した豊かさを肌で感じました。

 

加藤シルビア
2008年に入社、初々しさが残る新人時代の加藤さん

当時のポーランドは文化や環境の違いが衝撃的でしたが、その一方で、人々の温かさやおおらかさには、とても惹かれるものがありました。

 

── たとえば、どんな光景が心に残っていますか。

 

加藤さん:人との距離が近くて、細かいことにはこだわらない。困っている人がいれば助け合うのが当たり前という雰囲気があって、人間関係もとてもストレートです。たとえば、日本の感覚だとお願いごとをするとき、「申し訳ないんですけど…」と前置きすることが多いと思いますが、ポーランドだと「そんなみずくさいことを言わないで」と怒られるくらいの反応が返ってきます。

 

学校の帰り道には、近所の人たちが「今日どうだった?」と声をかけてくれる。地域で子どもを見守るような空気があって、安心感と心地よさがありました。