100%の力で働けない葛藤で新しい挑戦を決意
── 100%の力で挑みたいのに、叶わない。そんなジレンマを抱え続けていたのですね。
加藤さん:TBSは本当に働きやすい職場でした。制度や環境が整っていて、周囲の理解もあり、とても温かかったんです。ただ、自分がホワイトな環境で働くことができているぶん、そのしわ寄せが誰かにいっているのではないか。そんな思いが心のどこかにずっとありました。

そして決定的だったのが、4人目を妊娠したときです。このときはこれまで以上に悩みました。3人の産休・育休の際も会社や周囲に支えられてきましたが、「また同じように迷惑をかけてしまうのではないか」という不安が大きく膨らんでいったのです。もちろん、TBSの上司や先輩方からは「産休を取ればいい」「4人目でも問題ない」と温かい言葉をかけてもらえました。
けれども、4人の子どもと向き合う生活を思い描いたとき、私のキャパシティや今の家庭の状況を考えると、復帰してもまた周囲に負担をかけてしまうのではないか…。そう思わずにはいられませんでした。大好きな職場だからこそ、このまま続けていいのか、自問自答を繰り返したのです。そして行き着いた答えが、今の自分の状況では会社の一員として100%の力で働くのは難しいという現実でした。だからこそ、会社員という立場の中で両立を模索するのではなく、支えてくれた環境への感謝を胸に、新しい働き方に挑戦する道を選んだのです。
── 新しい道を歩み始めた今、どんな未来を描いているのでしょうか。
加藤さん:私は何事も全力で取り組みたいタイプなんです。でも、仕事と子育ての両方に力を注ごうとすると、どうしても中途半端になってしまう。3人の子どもを育てながら、その限界を感じていました。そこに4人目を授かる大きな決断をしたからこそ、子育てを続けながらも、自分らしく挑戦できる新しい働き方にシフトしようと決めたんです。
そしてもし今後、ふたたびTBSで仕事をさせていただける機会が巡ってきたら、そのときはフルスイングで挑みたい。そんな前向きな気持ちでいます。いまは新しいスタートラインに立ち、子育てを通じて得られる経験も含め、自分にできることを探していきたいと思っています。
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長年TBSのアナウンサーとして活躍し、キャリアと子育てを両立させてきた加藤シルビアさん。しかし「100%の自分で仕事に向き合いたい」という思いから葛藤を抱え、4人目の出産を機に、TBSを退職。現在は0歳児を含む4人の育児に奮闘しながら、自分らしい働き方に挑戦しています。子どもがボタンつけに手間取る姿を見ても、「生きていれば合格」という心境で、子どもたちを見守りながらも、怒涛の日々を送っているそうです。
取材・文/西尾英子 撮影/内田紘倫 写真提供/加藤シルビア