4人目の妊娠がわかったとき、真っ先に浮かんだのは「また周囲に迷惑をかけてしまうのでは」という不安だったと、TBSで17年間キャリアを積んできた加藤シルビアさんはいいます。母として、働く女性として、どう生きるかを自問自答し、退職を決断。女性のキャリアと子育てのリアルに向き合いながら、自分らしい挑戦の道を選んだ決断の裏側をお届けします。(全3回中の1回)
今年2月に長年勤めたTBSを退職
── 元TBSアナウンサーの加藤シルビアさんは、報道や情報番組の現場で17年間キャリアを積み、今年2月に退職。翌月の3月30日には、4人目のお子さんを出産されました。3人の子育てと仕事を両立する日々のなかで、「100%の自分で仕事に向き合いたい」という思いが強くなり、新しい道を選ぶ決断につながったといいます。これまでの17年間を振り返って今、どんな思いがありますか。
加藤さん:17年間という月日は、本当にあっという間でした。ただ、アナウンサーという仕事はとても奥が深く、「やりきった」と思える瞬間は、たぶん一生、来ないんじゃないかなと思っています。たとえば、初めて本格的にナレーションの仕事に取り組んだのは2年前でしたが、そこで新たな壁にぶつかりました。声だけで人の感情を表現する「ボイスオーバー」は、まるで演技のようで、それまで番組進行などが中心だった私にとって、未知の領域。
何度も録り直しを重ねても、なかなか思うようにいかず、当時は入社15年目でしたが、言葉を伝えるプロとしてまだ入り口にも立てていないことを痛感しました。ひとつ乗り越えたと思っても、すぐに次の課題があらわれる。きっとこの仕事は、終わりのない挑戦を続けていくものなのだと感じています。

── お子さんの人数が増えていくなかで、アナウンサー生活と育児の両立は、並大抵のことではなかったと思います。どのような工夫をされてきたのでしょう?
加藤さん:長男と長女を立て続けに出産して産休・育休を取った後、復帰して初めて担当したのが『あさチャン!』という朝の情報番組でした。周囲からは「小さな子どもを2人抱えて朝番組なんて大変でしょう?」とよく言われましたが、私たち夫婦にとっては、働く時間帯を考えたとき、むしろ理想的な環境だったんです。
忙しい夫に、幼稚園の突然の発熱などで日中や夕方に子どものために動いてもらうのは負担が大きいと感じていました。そこで、朝、子どもを起こして朝食を準備し、保育園に送り届けるところまでを夫が担当し、午前中に帰宅した私が夕方からの育児を担う。初めはいろいろな準備がつらそうだった夫もやがてリズムをつかみ、子どもとの信頼関係もよりいっそう増したように感じました。