2025年7月に65万円のフルオーダーメイドでトレードマークのスーツを新調したことがニュースにもなったCOWCOWの多田健二さん。今回で3代目だそうですが、上京後から着始めて今年で25年目。その間、予想もつかない悲喜こもごもがありました。(全3回中の3回)

竹下通りでたまたま買ったスーツが

── COWCOW多田さんといえば、「伊勢丹の紙袋柄」スーツがすぐに思い浮かびます。最近、65万円かけてスーツを新調したと話題になりました。

 

多田さん:生地から織り上げて、フルオーダーメイドで制作したので、65万円かかったのは本当です。じつは、このスーツで3代目になります。初代は2001年、コンビで上京したとき、相方の「ボケとツッコミは、ひと目でわかるほうがいい」と考えて、竹下通りのビジュアル系バンド向けショップで買いました。価格は1万5000円くらい。何も知らずにそのスーツを着て舞台に出ると、お客さんのほぼ全員からアンケートに「衣装が伊勢丹の紙袋にしか見えない」と書かれたことで、「どーもー、伊勢丹の紙袋でーす」のつかみが生まれました。

 

── 偶然選んだスーツがトレードマークになるなんて、すごいですね。伊勢丹の紙袋柄スーツと出会って、今年で25年目です。ずっと変わらず着続けているのでしょうか?

 

多田さん:じつは、「M-1グランプリ」にこのスーツでも臨みましたが準決勝止まりで、その後、伊勢丹柄スーツを脱いだ時期がありました。でも、まわりに勧められて再び着始めました。

 

COWCOW
インドネシアで大ヒットし「アーティスト」として有名歌番組に出演(中央黒服左側が多田さん)

その後、2013年の暮れに「伊勢丹の紙袋の柄がリニューアルする」というが発表があり、ネット上で「多田はどうなる?」と、心配の声が上がりました(笑)。どうしたものか考えていたら、私のスタイリストさんと吉本興業の社員さんが伊勢丹さんと相談してくれて、伊勢丹さんから新しい見本生地を送っていただきました。公式に「伊勢丹柄のスーツ」を認めていただいたわけではないのですが、「スーツを作り直す場合、こちらを見本にしてください」と、協力してくださったんです。

 

── 粋なはからいですね!

 

多田さん:その見本生地をもとに、糸から織り上げて生地を制作し、2014年から2代目のスーツを着ることに。オリジナル制作の生地は「50メートル=50万円」。最短50メートルからの受注なので、スーツを2着作っても残り40メートル近く余ることに。「誰か、40メートル=40万円で買い取ってくれませんか?」と、舞台でよくネタにしていました。でも、番組企画で使用したり、まわりでほしいという人にあげたりして、結局すべて使いきりました。