お金を渡すことが父の愛情表現だった

── 内縁の妻はお父さんの認知症や介護について何か言っていましたか?
フジタさん:父のいちばん近くにいた人だから、父が認知症と診断される前から異変には気づいていたらしいけど、病院に連れて行くことはしなかったみたいです。あと、父は認知症になる前から内縁の妻に月10万円くらい渡していて、認知症とわかった後も、内縁の妻はしばらくお金を受け取っていたんです。
父は内縁の妻にお金を渡すことに強い執着があって、認知症になった後も、そこだけはしっかり覚えているんです。途中から僕が父のお金の管理をしましたが、内縁の妻にお金を渡す日が近づくと、僕に「お金、お金」と頻繁に電話がきて、落ち着かなくなって。
── どうしてそこまでお父さんはお金を渡したかったのでしょうか?
フジタさん:お金を渡さないと、関係が終わっちゃうって思ってたみたいです。父の愛情表現というか。
父は毎月お金を渡していましたが、途中から内縁の妻が「私が父の年金を管理する」と言ってきたんです。でも、父はもともとお金の使い方が荒かった。年金が出てもいろいろ使ってしまうらしく、内縁の妻から「年金の管理はムリだ」と言われて結局、僕がまた管理をすることになりました。その後、父の収入は年金だけなので、介護費や施設に入るとなると全然お金がたりなくて。内縁の妻には状況を説明をして、お金を渡すのは終わりにしたいと言うと「わかった」と。そこから父が亡くなるまで、内縁の妻と会うことはなかったです。
── 複雑ですね…。では、お父さんの介護はどのように進んでいきましたか?
フジタさん:はじめは実家に見守りカメラを設置したり、ヘルパーさんに来てもらったりすることでなんとかなっていましたが、父が次第に徘徊するようになって。一緒に住むしかなくなりました。その後も体の機能がどんどん落ちていって、はじめは介護認定が2だったのが、介護4になって。ヘルパーさんだけでなくデイサービスも併用するように。介護施設に入る話も出たんですけど、「自分は大丈夫」と父が言い張ったので様子を見ていたんです。
でも、父が寝ているときにベッドから落ちて。冬でしたが、ひとりでベッドに戻ることができず、肺炎になって…。ケアマネージャーさんと「これでは自宅介護は厳しいだろう」と話しをして、施設に入れることを決めました。