オーディションを勝ち抜きNewsPicks初代キャスターに抜てきされた奥井奈々さん。鳴り物入りで入社したものの、初の担当番組は4回で打ち切りに。自信をなくし、収録中に号泣してしまうことも。そんな彼女が、堀江貴文さんらさまざまな共演者との出会いを経て見つけたのは「整わないままでいい」という生き方でした。(全3回中の2回)
年1回は番組中に泣くアナウンサーだけど
── オーディションに合格し、初代NewsPicksキャスターとなった奥井さんですが、軌道にのるまでは挫折の連続だったそうですね。私も、番組内で奥井さんが涙を流しているシーンを見たことがあるような…。

奥井さん:そうなんです。年に1回ぐらい号泣する情緒不安定回があったりして…。もともとスキルも何も伴わないまま出演することになり、最初に担当した番組は4回で打ち切りになってしまったんです。所属して1年半ほど経ったころ、『The UPDATE』という番組で、古坂大魔王さんと一緒にMCを務められることになりました。
その番組で、あるとき「ジョブ型雇用」について取り上げたんです。ジョブ型雇用というのは、終身雇用ではなくスキルベースで人材を雇用することですが、当時は私自身アナウンススキルもなく、かといってほかのスキルもなくて。「このまま日本がジョブ型雇用になっていったら、私は食っていけなくなる。誰からも必要とされなくなるんだろうな」という不安の中での収録でした。
── 自信がなかったんですね。
奥井さん:そうですね。それで収録中も「自信もスキルもない私はどうしたらいいですか?」ってポロッと本音の質問が出たりもして…。その質問に、当時ユニリーバ・ジャパンの人事だった島田由香さんが「スキルがあるかどうかじゃなく、やるかやらないかだよ」って答えてくださって。そのシンプルな回答がめちゃくちゃ胸に刺さったんです。
収録中、ずっと泣くのをこらえていたんですが、終わった瞬間にブワーッと涙が出てきてしまって…。
あとは、ROLANDさんとの番組で、子育て中のシングルマザーの方のお悩みを解決する回があったんですが、当時は私もちょうど妊娠中で。大変な状況に置かれても一生懸命頑張っていらっしゃるシングルマザーの方の話を聞いて「本当にすごい」と感動しました。しかも、その方に対するROLANDさんや共演者の岡島悦子さんの答えが素晴らしくて。たとえば、「仕事も育児ももっと完璧にこなしたい」と悩むシングルマザーの方に対して、「鎧をいったん脱いでもいい」「もっとお子さんに弱いところを見せていいんじゃないか」とお話しされていました。「なんでこんな素敵な言葉にできるんだろう」という思いもあり、収録中に感極まって泣いてしまった記憶があります。
── アナウンサーの方は、自分の感情は表に出さずに進行に徹するイメージがありますが、奥井さんはご自身の感情を素直に表に出すほうなんですね。
奥井さん:実は、私は司会進行にあんまり重きを置いていなくて。それよりも視聴者の心に刺さりそうなところがあれば、その部分を拡大するし、そうじゃないところはすっ飛ばして省略する、ということを常に考えています。幼少期に当時人気だった「星の砂」から着想を得て砂場の砂を売っていた話にもつながるんですが(笑)。「今、人は何を好んでいるのか」をキャッチするアンテナや、自分の感性を大事にするタイプもしれません。
── 自分の心に忠実でいることって大切ですよね。
奥井さん:そうですよね。私、仕事も私生活も整えすぎないことを意識しているんです。ここ数年、「整い」ブームじゃないですか。SNSを見ていても、容姿も生活も仕事も完璧な人しかピックアップされない。そういう完璧さを諦めることにさえ、罪悪感がつきまとうように思うんです。でも、いろいろ整わないまま、ガラスが刺さったまま走っていく、というのも美しいんじゃないかなって。だから最近は「整えない勇気」を自分のモットーにしています。