我慢しないで「しんどいねん」「助けて」と声に出して

── 改めて、ご両親の看取りを振り返ってどんなお気持ちでしょうか?
春さん:父の場合は、「ズボラ介護」がうまくできるようになったころに入院して亡くなってしまったので、これからもっとうまく介護ができるはずだったのに…と、寂しい気持ちになりました。病院を退院して、家に帰ってきてほしかったです。母も病院で亡くなったので、自宅で看取れたらよかったという気持ちがあります。
── ご自身の経験をふまえて現在、介護生活中の方に「これだけは伝えたい」ということは何ですか?
春さん:介護生活に追い詰められて親を殺してしまう方がいます。してはいけないことですが、正直、気持ちはわからないでもありません。本当にまじめに介護だけに取り組んでいたら、そうなっていきますよ。だから、いま介護生活真っ最中の方には、手を抜きながらの「ズボラ介護」をおすすめしたいです。根を詰めてする介護は、するほうもされているほうもつらいですから。
あとは、できるだけひとりで抱えずに人に頼ること。家族、ご近所、ケアマネさん、施設の職員さんなどに頼りながら介護をしたほうがいいです。周囲の友だちも介護をする年齢の方が多いと思うので、お互い介護仲間としてグチを言い合い、話をするとラクになりますよね。我慢しないで「しんどいねん」「助けて」と口に出して言ったほうがいいですよ。
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近年は女優として活躍し、NHK連続テレビ小説などにも出演経験がある春やすこさん。14歳で漫才師としてデビューし、漫才ブーム時は1日2時間睡眠という日が続くほどの忙しさだったそうです。芸風が「毒舌漫才」だったため、物騒な手紙が届くこともあったとか。そんな時代を乗り越え、育児を機に仕事をセーブし、復帰するも両親の介護に追われました。ご両親が亡くなられた後は、介護由来と見られる「腰椎椎間板ヘルニア」に悩まされ手術を受けたそうです。
取材・文/富田夏子 写真提供/春やすこ