30代で生まれた「くみっきー」と自身のギャップ

舟山久美子
舟山久美子さん

── 最近ではモデル以外のお仕事が多いようですが、なにか転機があったのでしょうか?

 

舟山さん:実は27歳のときに大きく体調を崩して、ダウンしてしまったんです。さっきも言ったような20代前半にやっていた無理なダイエットや、やりたくない仕事をするなど、気持ちと合っていないような働き方をずっとしていたんだと思います。今思えば月に一度は高熱を出したり、食物アレルギーがどんどん増えたりと、体は何年も前からSOSを出していました。でも、責任感や忙しさから、それに気づかないふりをしていたのだと思います。

 

「結節性紅斑」という皮膚の下の脂肪細胞が炎症を起こす病気になり、1週間ほど入院することになりました。最初は仕事ができない1週間がすごく怖かったのですが、ゆっくり過ごすうちに、これを機会に自分の心にきちんと向き合ってみようと思ったんです。

 

── どのように向き合ったのですか?

 

舟山さん:それまでは嫌いなことでも心にふたをして続けていたのですが、ふたを取っ払い負の感情を掘り起こし、仕事もプライベートも嫌だと思うことは全部辞めることにしたんです。同時に自分が好きなことも考え、好きな時間や空間をたくさんつくる努力もしました。「くみっきー」として求められているキャラクターを演じるのを辞め、プライベートでは会いたい人にだけ会って、無理な自分を演じずに、自分のために働くことにしました。

 

── 34歳の現在は、みずから立ち上げたスキンケアブランド「Herz skin」で、経営に関わるお仕事を中心にされています。それも自分と向き合った影響からなのでしょうか?

 

舟山さん:2019年に結婚、2021年に1人目の子どもを出産したのですが、妊娠しているころから子どもに自分の生き方について胸を張っていたい、子どもに見せたい自分でいたいと思うようになりました。それで自分のブランドを立ち上げようと思い、始めたのが「Herz skin」です。

 

27歳のときに入院したことを機に、自分のケアが疎かになると人に優しくできないし、判断力が鈍ることも知りました。それはたぶん、私だけに限ったことではなく、ほかの人たちもそうではないかと。タレントとしてではなくプロダクトを通して、自分をもっと大切にしてほしいという想いを、ファンの人たちに届けていければと今は思っています。

 

── タレントとして伝えるのではダメだったのでしょうか?

 

舟山さん:10代から培ってきた「くみっきー」というモデルとしてのイメージが世間的に強すぎて、そのイメージ像と伝えたいことにギャップを感じてしまい…。モデルとして発信すると、今私がやりたいことができないと思いました。それで私自身は経営者となり、プロダクトを通して想いを発信するという方法を選択しました。

 

自分自身が30代になり、30代の女性の生き方の難しさを痛感しています。仕事がのってきて楽しい時期であると同時に、出産のことを考えると結婚相手を探したり、出産や子育てのために仕事をセーブしたりすることも考えないといけない。仕事をしながら子育てをしていくには世の中の理解がまだまだ薄い気がして、仕方がないけれどそういう状況にもどかしさも感じました。

 

今、子育てをがんばっているママを明るい気持ちにしたり、子どもを産みたくないと思っていた人が希望を見出したりできるようなロールモデルになっていきたいですね。

 

 

ギャルモデル時代は無理なダイエットをしたこともあったという舟山さん。そんな自身の発言を信じ、ファンがガリガリに痩せてしまったことがあったそう。責任感がなかったと自分の発言を悔い、これを機にダイエットの知識を学ぶことに。かつて憧れた体型とは違うものの、今は健康的な生活を送れているそうです。

 

取材・文/酒井明子 写真提供/舟山久美子