「親は強くて完璧な存在ではない」と知った

舟山久美子
ギャル時代の舟山さん

── そのころ、舟山さん自身が自暴自棄になるようなことはなかったのですか?

 

舟山さん:お金がないことでつらいことは、もちろんたくさんありました。でも、人の優しさやものの大切さを知れたのも、このときがあったから。たとえばライフラインが止められると、近所の人が家に呼んで食事をごちそうしてくれることがよくありました。そういう人の優しさに触れたことは当時も気持ちをポジティブにしてくれたし、そのときに感じたハングリー精神は今の私を作ってくれた経験になっていると思います。

 

人間はひとりではなにもできないと身をもって体感したし、親も完璧ではないと思ったのもこのころです。

 

── どういう意味ですか?

 

舟山さん:子どものころは親って強くて、完璧な人間だと思いますよね。でも、親だってつらければ落ち込むし、泣くし、精神的に弱くもなる。親は子どもが困ったときにお願いごとをしてもいい当たり前の存在だったけれど、本当はそれが当たり前ではない。困ったときはみんなで支え合い、できることをお互いにサポートすることが大切だと生活が変わったことで知ることができました。

 

これは実際に子どもを持った今の私自身も感じていること。子どもといっしょで親もひとりの人間であり、子どもに偉そうに物事を教えるような立場ではないんですよね。現在、3歳と7か月の2人の子どもがいますが、自分が困っているときは背伸びせずに上の子どもに助けを求めるし、怒りすぎてしまったときは子どもにきちんと謝るようにしています。

 

── ご実家の借金はいつ、返済し終わったのですか?

 

舟山さん:家族みんなでコツコツ返していたのですが、最終的には17歳で私がモデルデビューをして、モデルの収入ですべての借金を返し終えました。借金のある間はどこか心が落ち着かず、家族みんなリラックスできる状況ではなかったと思います。借金を返したことで、未来が見えないモヤモヤなどがなくなり、最低限の不安は取り除けたと思っています。

 

 

家族のために借金は払い終えた舟山さん。モデルデビューから順調に仕事をこなしていましたが体調を崩したことで、自分の生き方を見つめ直すことになりました。現在はスキンケアブランド「Herz skin」を立ち上げ、ギャルモデルから経営者として転身を遂げ、活躍しています。

 

取材・文/酒井明子 写真提供/舟山久美子