ひとつの連絡から命を繋いでもらって

── そこからどうやって、今のコスプレの仕事に繋がったのでしょうか?
アヤミーさん:もともとアニメが好きだったので、家に引きこもりつつも、自分が好きなアニメのコスプレをしていたんです。カメラマンさんに写真を撮ってもらって、自分のSNSやメルマガに発信することは続けていました。
あるとき、私のコスプレを見た人から「コスプレのお仕事をしませんか?」と声をかけていただきました。「私、40代ですけど大丈夫ですか?」「全然、大丈夫。そんなの関係ないですから」と言ってくださって。ほかにもそうした依頼が徐々に来るようになって。自分でもコスプレイヤーとして本格的に活動を再開していくと、昔からファンでいてくださった方々が、私が活動を再開したことを知って、再び応援してくれて。
── ありがたいですね。
アヤミーさん:いっときは生きる希望をなくしていましたが、コスプレのおかげで自信を取り戻せたし、生きる活力も見い出せて、みんなにも応援してもらって本当に感謝しています。その後、2020年、42歳のときに年齢も公表しました。自分に自信がついたことと同時に、コスプレは年齢も性別も国境も関係なく、何にでも変身できる魔法だと思ったんです。
── その後、コスプレーヤーの全国コンテスト「コスプレイヤー・オブ・ザ・イヤー2022」の重加工部門のグランプリに輝きました。現在は、日本はもちろん世界に向けてコスプレについて発信したり、コスプレのコミュニティを作ったりと、さらに精力的に活動されています。
アヤミーさん:私はコスプレに命を繋いでもらったし、コスプレに恩返しをしたいとも思ってるんです。コスプレを趣味の範囲で楽しむのはもちろんいいと思います。ただ、コスプレを仕事として考えたとき、タダ同然のギャラで依頼されるのではなく、きちんとした報酬をいただいて、ビジネスとして成り立たせることが大事になります。そのために、コスプレイヤーの価値が上がるような活動をもっとしていきたいと思いました。
「コスプレの仕事ってどんなことしているの?」と聞かれることもまだまだ多いんですけど、たとえば町おこしや、eスポーツのイベントに呼ばれてコスプレをすることもありますし、印象的だったのはケニアに行ったとき。ケニア初の日本人による盆踊りイベントにて、コスプレのコミュニティメンバーと共にゲスト参加し、ステージで歌やダンスのコスプレパフォーマンスをしてきたことです。鬼滅の刃のコスプレをしたことも。アフリカでは日本のアニメの人気が高く、とても喜んで頂けました。
コミュニティを作ったのは、仕事の案件の紹介や仲間づくり、コスプレが好きな人達と交流できる場所を作りたいと思ったからです。
── コスプレをしている人たちは、何歳くらいの方が多いのでしょうか?
アヤミーさん:コスプレは20代で辞めてしまう人も多いのですが、私のコミュニティには20代から60代まで幅広いコスプレイヤーの方々がいます。年齢を問わず、自分達が好きなことをしているので、みんなイキイキとしていて楽しそう。私も40代後半になりますが、自分がしたいコスプレに合わせて体を整えるのも美容にも健康にいいし、準備しているときからすでにワクワクするし、何よりコスプレをして人前に出るとテンションも上がります。すごく幸せなことだと思っています。
── 30代の頃のご自身と比べてかなり世界が変わったのでしょうか?
アヤミーさん:夢が破れて引きこもりだった10年がありましたが、それでもコスプレの発信を続けたことによって新たな道を開くことができましたし、40代で活躍することで諦めかけている人に勇気と希望を与えることができて、本当に見える世界が変わりました。
PROFILE アヤミーさん
北九州出身。「コスプレイヤー・オブ・ザ・イヤー」2022で重加工部門グランプリを受賞後、さらにコスプレイヤーを支援できるアプリ「Way To Go」を開発中。コスプレイヤーの価値向上のために活動を続けている。活動内容はx(Twitter)(@ayacocteau)にて発信中。
取材・文/松永怜 写真提供/株式会社エポックスター