彼の子どもを産んでみたかった

── ご両親の反対もあったと聞きました。どうやって乗り越えたのですか?

 

江口さん:「もう少し安定した仕事の人と結婚してほしい」という思いがあったみたいです。娘を嫁がせるということで、いろいろと気になったのでしょう。こっそり彼の身元を調べたみたいです。すると、実家が静岡の修善寺(現在の伊豆市)でわさびを栽培する農家、代々村長や郵便局長を務めていた家柄だとわかり、「身元がしっかりしている」と安心したみたいです。

 

でも、父はもともと芸事を嫌っていたわけではなく、むしろ理解がある人でした。うちの親戚には、日本で初めてブロードウェイに立ったダンサー・中川三郎がいて、父もその影響で若いころはダンスをしていたんです。芸人に嫁ぐのを心配していたのは母のほうでしたが、彼の誠実な人柄に触れるうち、どんどん仲良くなっていきましたね。

 

交際期間7年を経て、1996年に結婚。長い時を共に重ね、今年で結婚29年目になります。気づけば、あっという間でしたね。最近では顔を見ただけで、言いたいことや気持ちが伝わることが多くて、「もしかして前世で血が繋がっていたのかも…」と感じるくらい。言葉じゃない部分で通じ合っている感覚があって、なんだか顔まで似てきたような気がします。 

 

── 「生まれ変わっても彼と結婚したい」とメディアでも語られており、夫婦の絆が深いことを感じます。その言葉にはどんな思いがあるのでしょう?

 

江口さん:生まれ変わって違う人と出会うのも、それはそれでおもしろいかもしれません。でもそれよりも「この人ともう一度出会って、また同じように笑いあったり、感動を共有できるなら、どんなに楽しく幸せだろう」って。だから、私は生まれ変わっても、やっぱり彼と一緒になりたいです。

 

── 素敵ですね。もしそうなったら、どんな未来を描きますか?

 

江口さん:もっと若いうちに知り合っていたら…彼の子どもを産んでみたいですね。

 

── そうなのですね。過去に、お子さんを持つことを考えたときもあったのでしょうか?

 

江口さん:ありましたよ。ただ、39歳のときに番組ロケ中の事故で腎臓をひとつ摘出する重傷を負ってしまって。さいわいにも命は助かりましたが、そこから妊娠となると体の負担が大きくて。年齢的にも難しくなってしまいました。

 

実はちょうどその少し前に、「そろそろ子どもが欲しいね」と夫婦で話していたところだったんです。でも、夫は「キミが元気で生きてさえいてくれれば、それでいい。このままふたりで楽しく暮らすのもいいよね」と言ってくれました。

 

子どもがいたらいたで、また違った未来になっていたと思うので、それも経験してみたいですね。彼にそっくりな子だったら、めっちゃかわいいだろうし、さらにおもしろい家庭になるだろうなって。そういう想像は、今でもすることがあります。

 

 

もうすぐ結婚30周年を迎える江口さんご夫婦ですが、結婚生活でケンカしたのはたったの1回きりだそう。しかもケンカの理由は新居の家具についてというささいなもの。「ケンカしないけど仲がいい」わけは、お互い「ここから先は踏み込まない」という境界線がわかっているからだそうです。勉強になります!

 

PROFILE 江口ともみさん

えぐち・ともみ。1968年、東京都生まれ。東洋英和女学院短期大学卒業後、商社への就職を辞退し芸能界入り。ナレーターや司会業を中心に活動し、「ビートたけしのTVタックル」など多数の番組に出演。1996年にたけし軍団のつまみ枝豆と結婚。現在は芸能プロダクション「TAP」に所属し、幅広くメディアで活躍している。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/江口ともみ