令和の新しい家族像のひとつといっていいのでしょうか。さまざまなアーティスト活動をする谷琢磨さんは2児の父ですが、子どものお迎えに女装姿で行く日常があります。周囲や子どもの反応が気になるところです。(全2回中の2回)
女装姿で女性の両親に結婚の挨拶に行くと…
── モデル、バンドのボーカル、イラストレーターとして活動する谷琢磨さん。仕事がきっかけで女装することになり、いまは日常生活も女装をして過ごしています。女装を始めて4年後には結婚しましたが、当時の経緯を教えてください。
谷さん:女装モデルの仕事先でいまのパートナーと出会い、「好きです」と言われました。女装してからは異性として認識されづらく、恋愛対象外の「かわいい」マスコットみたいな存在だと思われることが多かったんです。だから、女装の私を恋愛対象として見てくれたことがまずうれしかったです。おつき合いしてみるとパートナーはすばらしい人で、とても気が合いました。この人を逃したら「好き」と言ってくれる人はほかには出てこない!と、交際1年で結婚しました。
相手の両親への挨拶は、フルメイクの女装姿で行きました。女装していることは隠すものではないからです。もし、ご両親に拒絶されれば、結婚にいたらなかったかもしれませんし、その不安はもちろんありました。でも、当時はとにかく女装が自分の仕事、アイデンティティだということをしっかりと伝えなければならないと感じたんです。さいわい、パートナーが事前に義両親によく話をしてくれたので、結婚の挨拶時は自然な対応で私を受け入れてくれました。ご両親が事前に私のバンドのライブを観に来てくれるなど、相手から理解しようと歩み寄ってくれて、自分は本当にラッキーでした。

── それは素晴らしいご両親ですね。結婚式はどのように?
谷さん:私たち夫婦は、ふたりでウェディングドレスを着て結婚式を挙げようと決めていました。でも、ほとんどの結婚式場で断られました。理由は「ウェディングドレスは1人まで」と、マニュアルで決まっているから。当時は、多様性やLGBTQへの理解があまり浸透していなかったからなのかもしれません。私たちの希望を受け入れてくれる教会をなんとか探し出して挙式を挙げました。