まぶたがない、頭蓋骨の一部が欠損しているなどの障がいを持って生まれた「おもちくん」こと未来くん。産後はNICUなどで7か月の入院生活を送りますが、自宅で一緒に暮らすようになると、ご両親も病院の先生も想像だにしていなかった成長が見られて── 。(全3回中の2回)

「小さい体で一生懸命、生きている」

星野未来
生後3日目。NICUでチューブに繋がれていた

── 頭蓋骨の一部欠損など、障がいを持って生まれた息子さんの未来くん。母親のしほさんが妊娠中に書いていたブログの「おもちくん」というネーミングで出産後も呼ばれることがあるそうですが、本名の「未来」というお名前はいつつけられたのですか。

 

しほさん:名前の候補は、妊娠中にいくつか考えていました。「意味がすぐわかる名前がいいね」とパパが言っていて、「未来」も候補の1つでした。「自分の手で明るい未来を切りひらいてほしい」という意味を込めて、最終的には産まれてからパパが顔を見て決めました。

 

── 出産は順調でしたか。

 

しほさん:22週のころに頭部や下あごの異常がわかっていたので、予定通り帝王切開で産まれました。気道が狭まっていたせいで、産声は上げられなかったです。すぐに未来は気管切開のために手術室に運ばれていきました。私は先に病室に戻って、手術が終わるのを待ちました。1時間くらいで終わると聞いていたのに、5時間以上たっても連絡がなくて、不安でしたね。気管切開はうまくいったそうなのですが、想定していた以上にいろいろな症状があって。たとえば、まぶたがなかったり、頭を触ったらやわらかくて骨がなかったり、調べるのに時間がかかったみたいです。私はその日は絶対安静だったので、パパが未来の顔を見て、先生からの説明を聞いてくれました。

 

── 父親の孝輔さんが、初めて未来くんのお顔を見たときはどんなお気持ちでしたか。

 

孝輔さん:産まれたばかりの赤ちゃんを見るのは初めてだし、医療機器につながれた赤ちゃんを見るのも初めてでした。いろんな器具や管につながれて、高い強度で呼吸サポートがされているから、体がぶるぶる震えている。その姿を見て、生命力に圧倒されましたね。「小さい体で一生懸命、生きている」と思いました。

 

しほさん:私はその翌日、助産師さんに車いすでNICUへ連れていってもらいました。パパが送ってくれた未来の写真は見ていたけれど、お顔にかなり特徴があるので、実際に会う前はめちゃくちゃ緊張していました。

 

NICUのいちばん奥にあるベッドで、未来はたくさんの管がつながれて、ぶるぶる震えていました。まぶたがないから、まぶしくないように目元にはガーゼがかけられていました。助産師さんに「ガーゼをめくりましょうか。ママの心の準備ができてからでいいですよ」と言われて、「めくってください」と覚悟をして答えました。

 

初めて顔を見たときに思ったのは、「私のお腹から出てきた赤ちゃんだ」ということでした。出産後、手術室へ運ばれる前に一瞬だけ顔を見たんです。「昨日たしかに私が産んだ子だ」と、なんともいえない気持ちがこみあげてきて、涙が出てきました。「よかったね、ママ来てくれたね」という助産師さんの言葉にまた泣けました。