「自分を愛そう」という言葉も素敵だけれど

── ところで、大学時代に同じアルビノの方に初めて会う機会があったそうですね。
神原さん:大学3年生のときですね。卒業論文は自分の経験を踏まえて「見た目問題」をテーマにしましたが、外見に何か症状が出ている人たちに対して、自分自身を含め、よくわかっていなかったのでお話をしたいと思ったんです。
明治大学にヒューマンライブラリーといって、差別や偏見を受けてしまいがちなマイノリティの方が、みずからの意思で「本」となって貸し出され、「読者」と対話する「仮想の図書館」のイベントがあるんです。ちょうど、アルビノの人が登壇すると知って、勇気を出して参加してみました。今まで「ほかの当事者と会うことは怖い」と思っていましたが、卒論の重圧もあり、思いきって参加しようと。
── なぜ、怖いと思ったのでしょうか?
神原さん:同じアルビノの人に会うと、自分がアルビノだとより強く認識するだろうと思ったんです。でも、実際アルビノの方と初めてお話ししてみると、コンプレックスが刺激されたと同時に、アルビノとしての思いや経験をわかち合えることができて、とても新鮮で楽しかった。会に参加してよかったなと思いました。その後は、別のイベントでもアルビノ当事者が集まる会に参加させてもらったり、私自身が当事者となって発信したりと、どんどん外に出ていくことが増えました。
── 今は、アルビノの方にも、そうじゃない方にもどんなことを伝えていきたいですか?
神原さん:たくさんありますが、まずは自分を受け止められるといいよね、といった話をよくしています。「ボディポジティブ」「自分を愛そう」みたいな言葉も素敵だと思うんですが、自分を好きにならないといけないのかな?と、私はプレッシャーを感じそうな気がして。
いろいろ調べていくと「ボディニュートラル」という言葉を知りました。自分の体型に対する考え方をそのまま受け入れよう。自分が好きなときも、嫌いなときもあるよねっていう考え方ですが、この言葉の方が自分にはフィットすると思って、講演でも伝えていますね。
あとは「好意的無関心」という言葉も使っています。アルビノの人を見たとき、その人にとっては見慣れないからジロジロ見てしまうかもしれないですが、奇異の目を向けず、無視でもなく、知らんぷりしてもらえたらいいなと。街中でアルビノの人に会っても、「そういう人もいるよね」とそっと見守ってもらえたらうれしいなと思います。
取材・文/松永怜 写真提供/神原由佳