体の色素が生まれつき不足しているアルビノの当事者として、現在は講演会などを行っている神原由佳さん。アルビノに神秘的なイメージを抱く人もいることもあり、容姿や恋愛については複雑な胸中だったそうですが ── 。(全2回中の2回)
「髪の毛を染めるなら採用しますよ」と

── 小学校卒業間近に自分がアルビノであると知った神原さん。中学、高校時代は人と見た目が違うことが嫌だったそうですが、大学生になっていかがでしたか?
神原さん:大学生になって世界が広がっていくと、フツフツとした気持ちから少し解放された部分はありました。たとえば、制服から私服になって髪型や服装も自由になると、金髪で学校に行っても目立ちにくくなったんです。美容院に行くと「キレイに染まってますね」と言われることもあって、おしゃれで染めてる人って思われることがありましたね。
── しかし、アルバイトの面接では苦労されたとか。
神原さん:アルバイトがしたくていくつか面接を受けましたが、髪色で落とされてしまうことがありました。「髪の毛を染められるなら採用しますよ」とか、面接を受けた後に「ほかの人に決まりました」と連絡がきて、後日その店の前を通るとまだアルバイト募集の張り紙があったことも。
── そうした反応を見て、髪の毛を染めようと思ったことはありましたか?
神原さん:高校生ぐらいのときは染めたいなって思ったこともありました。でも、大学生になって出会いが広がると、たとえば元ひきこもりの人やLGBTの人ほか、今まで出会わなかった人たちとも話をする機会が増えていくと、世の中にはいろいろな人がいると知ったんです。そうなると、髪の毛を染めてまで人に受け入れてもらうのもせつないような、髪を染める必要ってあるのかなって思ってしまって。
「働きたいなら髪の毛くらい染めれば?」「自己主張が強くて協調性がない人」って思われるかもしれないけど、髪を染めても染めなくても自分は自分だし、友達や家族、ありのままの自分を受け入れてくれる人もいるので、染めずにいこうと決めました。
── ちなみに、アルビノの方に対して「キレイ」と思う人もいるそうですが、どう感じますか?
神原さん:アルビノ=白い髪に白い肌、青い目をしているような神秘的なイメージを想像させるのでしょうか。でも、アルビノは肌や髪の色以外、顔の形や体型、スタイルはみんなと変わらないんです。もちろんアルビノで容姿が整った人はいますし、容姿をいかしてモデルとして活動している人もいます。実際、私も「キレイですね」と、何度か言われたこともありましたが、正直うれしくない…というか微妙な気持ちでした。
アルビノ=キレイがプレッシャーになったこともあるし、いっぽうで過去に自分の経験を記事で伝えたとき「アルビノなのにブスじゃん」といったコメントがあって傷ついたこともあります。今だったらサッと流せるかもしれませんが、決していい気はしないですよね。
── もちろんです。恋愛や結婚に対しても考えることがあったそうですね。
神原さん:子どもへの遺伝の可能性は低いけれど、0%ではないんですよね。そもそも恋愛に自信がなかったし、アルビノだから自分は選ばれない、と思い込んでいた時期もありました。でも、たまたま大学時代の男友達と話していたときに、何かの話の流れで、結婚願望について聞かれたことがあったんです。「神原は結婚願望あるの?」「私はアルビノだから、万が一子どもに遺伝して、自分と同じ思いをさせるのが嫌だ」というと、「神原が今まで生きてきた姿を、子どもに見せたらあげたらいいんじゃない?」と言ってくれて、とても救いになったことは覚えています。
今もこの先どうしたいといった結論は出ていませんが、自分が親になる選択肢は持っていいのかなとも思っています。