やっと病名が判明も「手術できないかも」と言われ
── かなり大変な状態ですが、まだ病名はわからなかったのでしょうか?
ミッチェルさん:そうなんです。2024年の年明けに行ったクリニックで、MRIを撮るように言われ、そこで初めて「子宮体がんの可能性がある」と診断されました。がんがどの程度進行しているのかを含めて、具体的な病状はわからないままでした。「うちではこれ以上詳しく見ることができないから」と先生に言われ、大病院の紹介状を書いてもらったんです。
「子宮体がんの可能性がある」といわれ、「がんだろう」というのは、自分でも覚悟はしていましたが、前向きな気持ちでいようと思って、大病院を訪れました。大病院でのお医者さんの第一声は「これはもう手術できないかもしれませんね」というもの。私はもう言葉も出ない状態でした。そのひと言で打ちのめされてしまいました。リンパへの転移もあるとのことで、「もうかなり進行していますね。ステージ4です」と先生がおっしゃって。
腫瘍科の先生ですから、毎日のようにそうした宣告はしているでしょうし、こういうシチュエーションに慣れているのでしょう。でも、私はものすごいショックで。淡々と告げられ、患者の気持ちをないがしろにしているように感じられたんです。言葉でめった刺しにされた気分で、生きる気力を失うほどでした。

── それはつらいですよね。
ミッチェルさん:うちは母子家庭で、その日は母の誕生日でした。クラシック音楽の道へ進む私を母はずっと支えてくれて、ふたりで一緒に頑張ってきました。その母の誕生日に、がんと診断されたことを伝えていいのだろうか、とすごく悩みました。でも、私が病院に行ったのは知っているから、母から何度も着信があって。母に泣いている様子を知られたくなくて「ステージ4と告知されたよ」と、毅然と伝えました。ただ、「手術ができない(状態)かも」と言われたことは、このときは伏せています。
今後について話すため、翌日も病院へ向かいました。そうしたら先生が初日と違い、この日は「手術はできます」と言い出したんです。ただ「手術後に抗がん剤投与をするため、半年間は仕事ができない」とのことでした。
クラシック音楽にしても芸人にしてもそうですが、やりたい人はゴマンといる世界で、長く休めばいままで培ってきたポジションをゼロにすることになります。とくにオペラは1日、2日練習しないだけで勘を取り戻すのが大変と言われていて、半年間、何もしないなんてとんでもない話です。「できるだけ手術をしない方法はないでしょうか?」と、先生にお聞きしたら「そうしたら、来年はどうなってるかわかりませんね」と、言い放たれてしまいました。どうしても先生への不信感が拭えませんでした。結局、セカンドオピニオンを受けるため、別の病院を訪れることにしました。