黒メンタルを乗り越えたからこそ今がある
── それはうれしい言葉ですね。
化け子さん:ただ、子どもたちに対して寛容でいられるようになったのは、黒メンタル期を乗り越えたあたりから。自分の状況を俯瞰で見られるようになり、自分の気持ちを大事にできるようになったのが大きかった気がします。娘が反抗期でイライラした感情をぶつけてきたりしたときに、昔の私だったら、感情的になって反発していたと思うんです。今は「娘もつらいことがあるんだな」って優しい視点をもてるようになって。それで親子関係も変わってきたように思います。

── 多感な時期のお子さんとのコミュニケーションは難しいですよね。
化け子さん:実は、娘は中2から学校になかなか行けなくなってしまって。高校に進学するも高2から通信制に転校し、結局ほとんど学校に行くことはなく、バイトをしたり家でのんびり過ごしたりする学生時代でした。娘は当初、世間体を気にして大学に行きたいと言っていたのですが、いろいろ考えた末に、芸能活動をやってみたいから大学に行くのはやめると。今はアルバイトをしながら事務所に所属して、芸能活動に挑戦しています。
結局、娘が大学に行かなきゃと言いながら動けなかったのは、本当にやりたいことではなかったからなんですよね。だから、フリーターになることを許したとき、娘に「やりたいと思ったことはどんなに小さなことでも躊躇なくやってほしい。これだけは約束して」と伝えました。
── 娘さんがこれからどんなふうに活躍していくか、楽しみですね。
化け子さん:もしかしたら今後、方向転換するかもしれませんし。息子はプロ野球選手の夢をあきらめ、自分の得意な分野で起業することになりましたが、それも人生の通過点でしかないんですよね。1歩新しく踏み出したことが大事だと思っています。
── 大人になっていくお子さんたちとは、どういう親子関係でいたいと思いますか。
化け子さん:私も息子も娘も、それぞれ仕事で壁にぶつかることもあると思うんです。だけど、それに対してお互いジャッジせず、干渉しないようにしたい。助けを求められたら話は聞きますが、子どもたちは自分で考える力が育ってきているので、私があれこれアドバイスする必要はないなと思っていて。息子の話を聞いて、私だったらこうするなって考えがよぎったりすることはありますが、息子は息子の考えでやればいいと思うので、見守っています。親子であってもお互いを理解して、リスペクトし合える関係でいられたらと思います。
PROFILE 化け子さん
ばけこ。本名・岸順子。1966年、岡山県岡山市生まれ。現役のヘアメイク職人として芸能界で35年以上にわたり活躍を続け、トップクラスのベテラン女優から数多くの指名を受けている。そのキャリアを活かして54歳でYouTubeチャンネル「ヘアメイク職人_化け子」を開設。加齢の悩みを解消するプロのテクニックをわかりやすく解説し、登録者数は40万人を超える。今年6月に5冊目の書籍『化け子のオキテ。』(主婦と生活社)を上梓。
取材・文/小新井知子 写真提供/化け子