大人女性に人気のヘアメイク職人・化け子さんは2人の子をもつシングルマザー。子どもが小さいころは周りに合わせて習い事をたくさんさせていたそうですが、あるきっかけで自分なりの育て方をしようと心に決めたそうです。(全3回中の3回)
「子どもに恥をかかせちゃいけない」という思いが空回り
── ご長男が5歳、ご長女が2歳のときに離婚されて、シングルマザーで子育てされているそうですね。
化け子さん:結婚していたときは外から見ると幸せそうな家庭だったと思いますが、私が夫に合わせて我慢をしていた部分が大きくて。これ以上は一緒にいられないと思って、42歳のときに子どもたちを連れて家を出て、アパートを借りて暮らし始めました。それからは、もう必死でした。離婚して間もないころは特に、この子たちに恥をかかせてはいけない、子どもが困らないように賢い親にならなきゃって。

── 子育てで意識していたことはありますか。
化け子さん:子どもが何かやりたいと思ったときに受け入れられる親でいたい、そのためにも稼がなきゃっていう意識が強かったです。それがいちばんのモチベーションでした。周りの家庭が子どもの可能性を引き出すためにといろんな習い事をさせていて。私もそれがいいことだと思って、ピアノ、空手、野球、サッカー、塾、そろばんなど、たくさん習い事をさせていました。
── 習い事はいろんなものを並行してずっと続けていたのですか?
化け子さん:そうですね。それがある日、息子が野球から帰ってきて、「空手の練習でできた指のタコが潰れて、グローブをつけると痛い」と言って泣いていたんです。息子は野球が大好きだったから、グローブをつけられないのがつらかった。それを見てハッとしました。「空手は私がよかれと思ってやらせているだけで、息子がやりたくて行ってるわけじゃない。私は何やってるんだろう」って。それで、無理してやっている習い事は全部やめようと言って結局、野球だけ残ったんです。別に周りと一緒じゃなくてもいい、私には私の育て方があるよねって、初めて思えた出来事でした。

── しつけはわりと厳しくなさっていたのでしょうか。
化け子さん:厳しい親だったと思います。愛情があるがゆえなのですが、こうしなさい、ああしなさいって。疲れているとイライラして口調が強くなってしまい、自己嫌悪に陥ることが多かったかな。
娘が小学校に入ったころ、仕事が不規則で家にいる時間が少なかったので、娘と交換日記をしてたんです。日記でも口うるさい部分はあったと思いますが、それを娘は今でも大事に持っていて、嫌なことがあったら日記を見返すんだそうです。幸せな気持ちになるからって。だから、愛情は伝わっていたんだなと思います。
── 一緒にいられる時間が少なくても、気持ちは通じ合っていたんですね。今年でご長男は22歳、ご長女は19歳に成長されました。
化け子さん:シングルマザーになってからはヘアメイクの仕事が減ってきた時期とも重なって、不安に支配された“黒メンタル期”が長く続きました。でも最近、人生でいちばん幸せだった時期っていつだろうって思い返したんです。そしたら、離婚してすぐのころの風景が思い浮かびました。小さなアパートで、私と息子と娘の3人で小さなちゃぶ台を囲んで座って、おいしいねってご飯を食べてる姿。当時の私は、世間で言われる幸せな家庭像やプライドを捨てて、ありのままの姿になれた安堵感があったんだと思います。子どもたちがいて、おいしいってごはんを食べてくれてる。そういうささいなことが幸せだったなって。人生って、見た目上うまくいってるから幸せ、というわけではないんですよね。
