押し入れから大量の梅酒が…ラップやビニール袋を溜めこむ人の心理
── 段飾りのひな人形や、五月人形などが飾られないまま押し入れにしまったままの家庭も多そうです。
柴田さん:人形などをゴミとして捨てるのは気が引けますよね。そういった場合は、人形供養などを利用してください。押し入れの奥って、死んでいるスペースになっていることが多いんです。中の荷物を全部出して、いるものといらないものを選別するところまでいけたらベストです。押し入れの中も循環していかないと、死んでいるスペースになってしまいますから。定期的に片づける習慣がつくと、ものが溜まっていくのを防げます。
── 押し入れから見つかったもので、印象深かった荷物はありますか?
柴田さん:年配の方に多いのが、銀行でもらったラップやボックスティッシュ。それだけで押し入れがパンパンになっている人がいました。コンビニの買い物袋が有料になってから、スーパーのリール巻きになったポリ袋を、70リットルのゴミ袋4袋分も溜めこんでいる家もありましたね。

そうやってものを溜めこむ人を、アメリカでは「ホーダー」と呼ぶそうです。溜まっていることで安心してしまう。ラップなんて2個あれば充分じゃないですか。むしろなくなったら買いたす程度にしておかないと、永遠に空きスペースが生まれません。
それと、ものが溢れている家でよく見かけるのが、手作りの梅酒。結局みんな、飲むために作ってるんじゃなくて、梅を漬けたいだけなんじゃないかな…。押し入れの奥から30年ものとか、すごいものだと60年ものの梅酒が出てくるんですよ。まだ飲みきっていないなら作るのをやめればいいのに、おばあちゃんってなぜか毎年梅酒を作っちゃう。以前、1970年に漬けたという梅酒が出てきて捨てようとしたら、「もったいない、これ飲めるんだよ」って。飲めるので捨てられないわけです。正直、手作り梅酒禁止令とか出してほしいくらい(笑)。梅酒は分別も大変で、排水溝に流すときのキャッチャーも自作して、梅だけわけて捨てています。それくらい手間がかかるんですよ。

── それは知りませんでした…!梅酒以外でも、よく見かけるものはありますか?
柴田さん:プリンのガラス容器も、綺麗に洗って取っておく人が多いですね。くだものを買ったときについてくるピックをプリンのガラス容器に大量に刺していたり(笑)。でもとっておいても結局、使い道がないんですよね。あとは、パンのシールを集めてもらえる皿。もらった状態のまま放置されているのをどれだけ目撃したことか。もらっても使わないなら、キャンペーンのシール集めをやめたほうがいい!
── たしかに(苦笑)。年老いた家族がものを溜めこまないようにしたいですが、どんなふうに伝えればいいでしょう。
柴田さん:皿の場合は「地震のときに落ちてきたら危ないよ」と伝えてみるといいかもしれません。梅酒や手作りジャムは「食べきらないなら今年は作るのをやめてみよう」と心を鬼にして言ってあげましょう。とにかく、自分たちの生活サイズに合ったものの量にシフトチェンジすることが必要です。ちなみに、うちの実家はすでに生前整理が終わっているのですが、きっかけはリフォームでした。そういう機会がないと、やっぱりそのままだったかもしれません。

── きっかけを待つうちにものが溢れかえることがないように、身丈にあった生活のための片づけを親子で習慣化したいものです。
柴田さん:そうですね。ちなみに、実家で見かけたら捨てずに取っておくといいものもあります。たとえば、40代には懐かしい『魔法の天使クリィーミーマミ』のおもちゃ。魔法のステッキは高値で取引されています。あと、リカちゃん人形は初代のもの。初代は瞳の中の白い輝きが1点だけなんです。意外ですが、木彫りの熊も人気です。熊が鮭をくわえていなくて、裏に彫り師のサインが刻まれているものは40〜50万円で取引される場合も。さらに、プロペラが赤い扇風機も20万ほどで取引されることがあります。実家の片づけにはこんなワクワクできる特典もありますから(笑)、ぜひトライしてみてください。
PROFILE 柴田賢佑さん
1985年9月25日生まれ、北海道出身。お笑いコンビ「六六三六」を’07年に結成。以降、お笑いライブ出演を軸に活動。現在はコンビ活動のほか、「お片付けブラザーズ」という団体を立ち上げ、生前整理、遺品整理、ゴミ屋敷の片づけなども行っている。著書に『ごみ屋敷ワンダーランド 清掃員が出会ったワケあり住人たち』(白夜書房)がある。
取材・文/池守りぜね 写真提供/柴田賢佑