── 書籍『顔面が「足の裏」みたいなので整形級メイクを仕事にしました』(KADOKAWA)では、かつては二重メイクが取れると、急いでトイレに駆け込んで直していた、というエピソードが紹介されていました。YouTubeで素顔を公開できるようになるまでには、どんな心境の変化があったのですか?

 

足の裏さん:YouTubeを始める前に竹下通りを歩いてたら、『ぷっすま』(テレビ朝日系)の関係者の方に声をかけられたんです。「詐欺メイクをテーマにした企画をやるんだけど、オーディションに参加してくれないか」って。その人は私が詐欺メイクをしてると見抜いたわけです(笑)。

 

それでオーディションに合格して、番組に出ることになって。そのときまですっぴんを誰にも見せていなかったので、友人たちはテレビで初めて私の素顔を知る、という状態でした。深夜番組だったので「みんな見てないだろう」と思っていたら、思っていた以上にたくさんの友達が連絡をくれて。正直、もっと悪い反応が返ってくると思ってたんですよ。ところが、みんな「すごい」ってほめてくれて。そのとき初めて、自分のメイクって誰かの役に立てるかもしれないって思いました。それが頭の片隅にあって「やってみよう」という気持ちに繋がりましたね。

 

──「もっと悪い反応」というのは、どんな反応をされると予想していたんですか?

 

足の裏さん:正直「すっぴん、ヤバっ」みたいに言われると思っていました。高校時代はアイプチで二重にして登校して、学校でその先のメイクをしていたから、アイプチせずに外に出るなんてありえなかったんです。だから「一重だったんだ」「全然、顔違うじゃん」と言われちゃうのかなって。でも、友人たちはみんな温かくて優しい人ばかりでした。

 

── 実際に動画を上げてみての反応はどうだったのでしょうか。

 

足の裏さん:正直、自信はないに等しかったですね。「こんな動画、誰が見るの?」という思いで1本目をあげました。ただ、1本目が50万回再生されて、たくさんコメントもいただいたんです。それで「私のブスが、もしかしたら人の役に立てるかもしれない」と思うようになりました。

 

──「ブスが人の役に」とおっしゃいましたが、「自分の顔=ブス」という前提に立つことに、葛藤はなかったのでしょうか。

 

足の裏さん:葛藤はないです。「顔のバランスが悪すぎるね」とか、直接何度も言われたことがあって。特に年上の人は具体性があって「パーツのバランスが全部悪いね」「隣の子は美人だけどパーツが真逆だね」とか言ってきたり。すれ違いざまに「ブス」と言われたこともあります。だから、高校に入ってからは「自分はかわいくないんだ」という認識が明確にあって。YouTubeを始めたときも、「自分のすっぴんはかわいくない」というスタンスで始めて何の違和感もなかったんですよね。

 

YouTuber・足の裏
自宅兼撮影スタジオで撮影しています

── お話を聞いていると、自分の顔についてどう言われようと、自分の価値が損なわれるわけではない、というスタンスがとても素敵だと思います。

 

足の裏さん:正直、自分の価値とかもよくわからないですし、自分のことが好きか嫌いかとかも考えたことがないんです。もちろん「顔のバランスが悪いね」「隣の子と顔が逆」とか言われたら、「この人言うな~」と少しはグサッときたりとかもするんですけど。でも、基本的に「だから何?」なんですよね。

 

むしろ、「そうだよね。私の友達かわいいよね」と思うタイプかもしれないですね。ずっとこの顔で生きてきたんで当たり前なんですけど。「ブス」って言われても「やだな」って思うというよりは「そうだよね」みたいな感じかも。

 

YouTubeをやっていて、厳しめのコメントをもらうこともあるんですが「言い方はキツイけど、アドバイスだな」と思うことも多くて。それでメイクがどんどん改善され、進化してきたんです。私がもともとメイクが上手、というよりも、見てくださった方のアドバイスのおかげで変わってきてるのは感じますね。

 

── 足の裏さんにとってメイクとは何でしょう。

 

足の裏さん:YouTubeを始める前は外に出る手段だったんですけど、今はその自分と視聴者さんが作り上げた人間の顔っていう感じですね。

 

 

YouTubeを始めた当初、共に活動する夫の「あつろー」さんの行動に違和感を覚え、精神的に追い詰められた時期があったという足の裏さん。その違和感の原因は夫の発達障害でした。「どうして忘れるの?」と日々イライラしがちでしたが、病院で診断を受けたことで「これは夫の特性なんだ」と受け止められるようになったといいます。



PROFILE 足の裏から人間になるには(足の裏)さん

あしのうら。素顔からメイクを完成させるまでのYouTube動画が人気となり「詐欺メイクの神」とも呼ばれる。夫・あつろーさんとの夫婦YouTubeチャンネル「あつの裏チャンネル」でも活躍中。

 

取材・文/市岡ひかり 写真提供/足の裏から人間になるには(足の裏)