正解を探して調べまくっていたが

愛原実花
お子さんと散歩に出かけて

── そうなのですね。なにかきっかけがあったのですか?

 

愛原さん:私がでかけている間、家族に子どもの様子を撮影してもらっていたのですが、その動画を見ると、寂しがったり泣いたりする様子もなく、元気に過ごしているんですよね。「ケガをしたらどうしよう」と心配していたけれど、柱にぶつかったり、階段から転げ落ちたりすることはなく、モノがあれば自分から器用によけて移動しているんです。食事にしても、それまでは食材にこだわって離乳食を作り置きしたりと結構頑張っていたのですが、気づけば大人用のおせんべいをポリポリ美味しそうにかじっていたりします(笑)。すべてが初めてだから、正解を探して調べまくり「こうでなくては」と必死に頑張っていたけれど、「心配しすぎていたのかもしれないな」と感じるようになりました。

 

仕事復帰をして、子どもといったん離れる時間を持つようになったことで「子どもって、私が思っているよりもたくましくて生命力にあふれた存在なんだ」と気づきました。過度に心配したり、頑張りすぎなくてもちゃんと育つし、子どもの成長と生きる力を信じようと思えるようになり、心が少しラクになれた気がしています。

 

── 子どもと離れる時間を持つようになったことで視点が変わり、肩の力が少し抜けたのですね。

 

愛原さん:そうだと思います。毎日『アニー』の現場で元気に飛び回る子役の子たちの前向きなパワーに触れて子どものたくましさを目の当たりにしたことも、よかったのだと思います。

 

『アニー』はもともと子どものころから大好きな作品でした。小さいころは、よくひとりで「アニーごっこ」をして遊んだものです。『アニー』の気持ちになってセリフを言うことで、別の人物になれることがすごく楽しかった。思えばあれが、演じることの原点だったのではないかと思います。そんな思い入れのある作品が、時を超えて、今度は子育てに悩む私を救ってくれた。なんだか不思議な気持ちですね。

 

子育てのことばかり考えすぎるのもあまりよくないと気づいてから、自分の時間を少しずつつくるように意識しています。私は産後の肥立ちがあまりよくなかったので、体調管理も兼ねて、最近ピラティスに通い始めました。終わったあとは、すごく爽快で心も前向きになるんです。今は託児所つきのジムなども増えてきているので、ママにも活用しやすくなってありがたいですね。自分の身体と向き合うようになったことで、食生活にも気を配るようになり、おもしろいくらい体調がよくなりました。

 

育児は、毎日が新しい経験の連続で、不安やプレッシャーを感じることも多いですが、だからこそ自分自身をいたわって、きちんとケアすることが大切だと実感しています。

 

PROFILE 愛原実花さん 

あいはら・みか。1985年東京都生まれ。2002年宝塚音楽学校へ入学。2009年に雪組トップ娘役に就任。2010年宝塚歌劇団を退団。以降、舞台やミュージカルを中心に活躍している。現在、丸美屋食品ミュージカル『アニー』に出演中。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/愛原実花