人の心を動かす曲を作り続けるバンド「HY」。そのキーボードとボーカルを務める仲宗根泉さんの音楽の原点は、まさかの家族バンドでした。トラック運転手だった父がある日、突然「家族でバンドをするぞ!」と言い出したことで人生が大きく動き出します。(全4回中の1回)
25年で感じる変化「恋愛ソングだけれど」
── 仲宗根さんがボーカルとキーボードをつとめるバンドグループ、HYは結成から25 周年を迎えられました。この25年で感じる変化はありますか。
仲宗根さん:驚くのは「初めてライブに来ました」という方が年々増えていることです。25年続けていると、長年のファンの方が多いのかなと思いきや、初めましての方、それも親子3世代で来てくださる方が多いです。娘さんが私たちと同世代で、お子さんとご両親を連れてという姿もよく見かけて。客層の幅が広がっているというのは、また新鮮な気持ちになりますね。

── 3世代でライブ!素敵ですね。
仲宗根さん:自分たちの年齢が上がってきても、いろんな年代の方に歌が届いているといううれしさがありますし、幅広い世代の方に響くものが作れているんだという自信にもつながります。でもこれは、私たちが歌い続けてきたからというわけではなく、みなさんが日常で歌いつづけてくれたおかげだと思っています。カラオケはもちろん、若い方も曲を使ってSNSで発信し続けてくれているので、昔の歌ではなく、今でも色褪せない歌にみんながしてくれているからだと感謝しています。
──『366日』はドラマや映画にもなりました。HYさんの曲は長年歌い継がれているものが多いですが、歌う側の心境の変化はありますか。
仲宗根さん:もともと恋愛の曲として作って、「あなただけがつらい思いをしてるわけじゃないんだよ」というメッセージを込めて歌っていたのですが、東日本大震災の被災地を訪れたことを機に、思いに変化がありました。福島県で歌った際、会場にいる方の中には津波や地震の被害で家族を亡くした人もいたんです。そのときに、この歌が過去への後悔ではなく、大切な人のことを思って心が浄化されるような曲になったらいいなと思いました。私も家族を亡くした経験がありますし、そこからは「皆さんもぜひ大切な人を想って聞いてください」と言って歌うようになりました。恋愛ソングですが、大切な人を想う気持ちは共通するものがあると思います。