「細木数子にならなくてもいい」家族と母の言葉に継承への決意を固めた

── かおりさんの中で「後継者になる覚悟」が固まっていったのですね。
かおりさん:幼いころから母を見てきた私は、母がさまざまな風評被害を受けていたことも知っていたので、すぐには決断できませんでした。仮に私が受け継いだとしても「夫や子どもに迷惑がかからないだろうか」「意に沿わないオファーに対して母のように強い姿勢で意見が言えるだろうか」と、さまざまな葛藤に悩まされました。
── 家族に相談しましたか?
かおりさん:夫は私より先に、母の会社の運営に携わっていたので「高齢だし、早く継承してあげたほうがいいのでは」と言っていました。子どもたちも「数子ちゃんが望んでいるなら、やってあげたらいいじゃない」と。SNSでの誹謗中傷や風評被害などがあるかもしれないということを話したら「そういうのは暇な人が言っているだけだから、ほっとけばいいんだよ」とあっけらかんとしていました。家族が背中を押してくれたことで、継承への決意が固まったんです。
──「継承する」というかおりさんの決断について、数子さんはなんと?
かおりさん:母は「継承したからといって、『細木数子』にならなくてもいい」と言ってくれました。「物事の考え方や人生の生き方の軸をずらさずに、六星占術を守ってくれればいい。それ以外はあなたの自由でいい」と。その言葉を受けて「やってみよう」と前向きに受け入れることができたんです。
── その後、どのように引き継ぎを行ったのですか?
かおりさん:毎日何時間も母とセッションを行い、六星占術はもちろん、心のあり方や社会との向き合い方、考え方、経営者としてのあり方についても学びました。母は「80歳になったら引退して静かに暮らしたい」と希望していたので、それまでに引き継ぎが完了できるよう努力を重ねました。
── 引き継ぎの際に難しかったことや大変だったことはありましたか?
かおりさん:「母」としての細木数子と、「師匠」としての細木数子の、対応の切り替えが難しかったです。普段は「ばあば」と呼んで一つ屋根の下で暮らしているのに、一歩外に出たら「先生」と呼んで師弟関係にならなければいけません。初めのうちは、戸惑いを感じていました。
── 数子さんが80歳になるまでに、無事に継承できたのでしょうか。
かおりさん:母の中で、学びに終わりはないので「ここまで引き継いだら終わり」ということではなかったのですが…。母が80歳を迎えて、母の事務所を私が引き継いだタイミングで「引き継ぎ完了」となりました。