2020年8月、YouTubeに投稿した「歌ってみた」の動画が話題を呼んだお笑いコンビ・パーパーのほしのディスコさん。「口唇口蓋裂」という先天性の病気を患い、歌うことが得意だったわけでもないほしのさんが、歌で人生を好転させられた理由はなんだったのでしょうか。(全4回中の4回)

子どものころは「歌声を人に聴かせたくなかった」

── 幼いころからよく家で歌っていたそうですね。当時から「うまい」と評判だったんですか?

 

ほしのさん:いや、そんなにうまいとかでもなく、人並みだったと思います。近しい人がいるところで口ずさむくらいだったので、これといった評価やリアクションもなかったですしね。

 

それに、口唇口蓋裂の影響が発音にもあったので、どちらかというとあまり人に聴かせたくないと思っていました。発音がちゃんとできないと、自分的にもすごく気持ち悪くて。せっかくのいい曲がよく聴こえなくなっちゃうのがイヤで…。本当にしんどかったんですけど、最後の手術をしたときに、言語聴覚士という発音などの訓練をしてくれる先生が「絶対によくなる」と言ってくれて、歌うことが好きになりました。

 

ほしのディスコ
テレビ東京系『カラオケバトル』で見事優勝!

── 歌うことが好きになってからは、どんな歌を歌っていましたか?

 

ほしのさん:EXILEさんの歌をよく歌っていました。TAKAHIROさんが入ったときのボーカルオーディションにも応募しようとしたくらい。18歳以上という応募資格があって、当時17歳だったので泣く泣くあきらめて…。もし応募ができていたら今ごろLDHにも入っていたかもしれません(笑)。

 

── そうなんですね!たしかに、YouTubeではEXILEの「歌ってみた」も投稿されていますね。ほしのさんは伸びやかな高音ボイスが魅力的ですが、歌うときに意識していることはありますか?

 

ほしのさん:完全に独学で、ボイトレとかもやっていないので、何の知識もないんです(笑)。「この歌い方なんか声量上がるな」とか、「お腹にこれぐらいの力を入れると高い声出るな」とか常に試行錯誤しながら歌っています。

 

── 身体の感覚で覚えながら、いろいろと試されているんですね。

 

ほしのさん:そうですね。なので、「どうやって歌ってるんですか?」って聞かれても何も言えないんです(笑)。何もわからないままここまで来ちゃって…。

コロナ禍に始めた「歌ってみた」動画がきっかけで

── そんなほしのさんが、歌ではじめに大きく注目を浴びたのは、2020年8月にYouTubeに投稿したクリープハイプ『栞』の「歌ってみた」動画でしたね。

 

ほしのさん:はい。コロナ禍にお仕事が全部なくなったとき、いろんな芸能人とか芸人さんがYouTubeをやり始めていて。それを見て「ヒマだしやってみようかな」と思っていたら、奇跡的にそのタイミングで、吉本時代のコンビ「カーディガン」の相方から数年ぶりに連絡がきて「YouTubeをやろう」と誘われたんです。

 

1人でやるのは大変かもしれないけど、2人ならできるかもと思ってチャンネルを開設することに。いわゆるYouTuberさんの真似ごとみたいな大食いとかドッキリの企画をやろうと思っていたなかで、たまたま「歌ってみた」も流行っていたから歌っただけ…という始まりなんです。

 

ほしのディスコ
人生を変えた歌、クリープハイプの『栞』を歌うほしのさん

── では、強みを生かそうとしたわけではなかったんですね。

 

ほしのさん:はい。歌が強みだとも思っていなかったので…。いちおう、プロフィールの特技に「女性キーの曲を原曲キーで歌える」と半ばボケのつもりで書いていたんですけど、それでテレビに出たこともなかったですし「何にもなんないな」と思っていたくらいで。

 

── こんなに反響があるなんて想像もしていなかったんですね。

 

ほしのさん:そうですね。好きな曲を歌って載せた「自己満動画」くらいの気持ちでしたから。あまりに反響がすごくて、元相方と10分おきにチャンネル登録者数を見て、どんどん増えていくのが楽しくてハシャいでたのを覚えています。