アメリカでは「自分をいちばん大事にする」のが当たり前

── アメリカと日本の価値観で大きな違いを感じることはありますか?

 

與さん:アメリカは日本と価値観が全然違うと思います。考え方も、気持ちの伝え方も。今では僕も、考え方から行動まで、良くも悪くもアメリカで暮らした影響を受けていると感じます。恋愛面もフレンドシップにおいても、日本で経験を積む機会が少なかったせいもあるかもしれません。もちろん芸能界に友達はいたけれど、自分がゲイだってことを隠したまま友達になるのと、「僕はゲイだよ」ってオープンな状況で友達になるのって、やっぱりぜんぜん違うから。

 

アメリカでは、オープンな自分がごく自然に受け入れられる経験をたくさんしました。アメリカ人って、意思表示が本当にはっきりしているんですよ。嫌だったら「NO」、いいと思えば「GOOD」ってはっきり言う。それに、何より自分を大事にしているんです。だから、僕もまず自分を大事にするようになりました。

 

與真司郎
現在は海外を旅しながらアーティスト活動をしている與さん。3月、イタリアから日本に帰国したそう。写真はフィレンツェでの1枚

── 自分のことを大事にするのって、なぜか大人になるほどうまくできなくなるものかもしれません。

 

與さん:そうなんですよね。僕自身、日本で暮らしていたときは、無意識にまわりの人たちに気をつかって、自分をあと回しにしがちでした。そのせいで、自分がいったい何者なのか、どんどん忘れていくような感覚に陥ってしまって。それでものすごくストレスが溜まって、元気をなくしかけていました。でも、アメリカの友人たちは、自分のメンタルヘルスをていねいにケアしている人が多かった。僕もそれを見習って、自分のメンタルケアの習慣を日々大事にするようになりました。

日本とアメリカのよさの両方を知っているからこそ

── アメリカでの生活をきっかけに、ご自身に何か変化を感じることはありますか?

 

與さん:最近は、日本語で話す自分と、海外にいて英語で話す自分に対して、話す内容が違っているような気がするんですよね。

 

── それはどういうことでしょう?

 

與さん:人と接するときの自分が3つに分かれている感覚があるんです。1つめはアメリカ人と遊んでるときの自分、2つめは日本人だけで過ごしているときの自分、3つめは海外居住経験がある日本人と過ごしているときの自分。毎回、自分の話す内容も違っているような気がします。

 

一時期、アメリカナイズされている自分に嫌気がさしたこともありました。でも今は、「アメリカ人的な考え方もあってよかった」とよく思います。そのいっぽうで「日本人のよさを忘れてしまっているかもしれない」と少し寂しく感じるときも。かと思えば、アメリカに戻ってアメリカ人の友達と楽しく過ごしていると、「ああ、僕はやっぱり日本人なんだな」って感じる瞬間もある。最近はそんな自分のことを「ユニークな存在」って思うようになりました。アメリカ人的な考え方と日本人的な考え方を半分ずつ持っている、という意味で。